days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"Species" on Blu-ray Disc


1年半も前に買っていたにも関わらず、放っておいて観ていなかった『スピーシーズ種の起源』のBlu-ray Discをようやく観ました。
これにてこのとき買ったBDをようやく観終えました。


この映画は1995年公開の作品と知り、ちょっと驚きました。
年月の経つのは早いものです。
劇場公開当時、友人と海老名のワーナーマイカルシネマまで観に行きました。
私のお目当てはH.R.ギーガーがデザインしたSILというクリーチャーです。
SILのスーツはスティーヴ・ジョンソンが製作し、CGIリチャード・エドランド率いるボス・フィルムが製作しました。
公開当時、ギーガーはジョンソンの仕事振りを絶賛し、CGIのSILを酷評していましたが、エドランドらの仕事も当時の技術ではかなりよく出来た方だと思います。
動物の皮膚感のCG再現は、未だにそう簡単にリアルに見えませんからね。


さて映画の内容は裏『コンタクト』といったところ。
世界最大の電波望遠鏡のあるアレシボ天文台(そう、『コンタクト』や『007/ゴールデンアイ』に登場したあの巨大施設です)によるSETI(Search for Extraterrestrial Intelligence = 地球外知的生命体探査)により、高度な知性体らしき存在からDNA配列の情報を受信します。
その設計図通りに受精卵から作ったのが、SILと名付けられたブロンドの白人少女。
彼女は逃亡し、ブロンド美女に成長。
種の保存の為に男どもを誘惑し、殺します。
SILを追うべく編成された政府の科学者グループも追跡しますが…というもの。
製作と配給はMGMだから一応メジャー映画会社なのですが、いやはや、低予算で製作されてもおかしくないくらいの内容です。
それでも追いかけるグループの科学者リーダーにベン・キングズレー、政府の暗殺者にマイケル・マドセン、科学者にマーグ・ヘルゲンバーガーアルフレッド・モリナ、霊能者にフォレスト・ウィテカーと演技が出来る面子を揃えているのが、メジャー映画らしい。
メイクや特撮も前述のような顔触れですから、そこはお金が掛かっています。


しかし安手な匂いを誤魔化せないのは、安直で詰めの甘い脚本と、緊張感の無いロジャー・ドナルドソンの演出にあります。
追跡グループは常に後手後手に回り、霊能者もSILが乗り逃げした車を見て「彼女は徒歩で逃げた」などとピンボケ霊視を連発。
グループは特に頭脳明晰な分析をする訳でもなく、右往左往するのみです。
しまいにはマドセンとヘルゲンバーガーは恋仲になるものの物語上は全く無意味で、単なるお色気でしかありません。
ラストでは地下洞窟での決戦となりますが、銃器類に素人の科学者集団で行っても勝ち目は薄いでしょう。
何で近くにいるであろう特殊部隊を呼ばなかったのかね、と突っ込みを入れたくなります。
ロジャー・ドナルドソンは後に『13デイズ』という緊迫感のある優れた政治スリラーを監督するのですから、余程この映画はお金稼ぎのつもりで演出を引き受けたのでしょう。
それくらいに見事にナマクラです。


それでもこのキワモノ映画は、この手の映画が好きならばそれなりに楽しめます。
目玉は成長したSILに扮した元モデルのナターシャ・ヘンストリッジの裸体とエロ、ギーガーらスタッフが作り出したグロの2つ。
SFホラー映画としてある意味正しいあり方です。

ヘンストリッジは人間離れして美しいし、クリーチャーの造形は面白い。
特にクリーチャーは登場場面の殆どが、同じくギーガーが担当した『エイリアン』同様に暗闇なので、殆ど見えないのが勿体無く感じます。
ディスクに入っている特典映像を見るしかないですね。
久々に観直したら、鑑賞中に余りの出来に椅子でずるずるとだらけてしまいましたが、まぁ愛すべき凡作・駄作といったところでしょう。


それにしても、キャストは皆、若いこと。
マドセンもモリナも若々しいし、特に『スパイダーマン2』のオクトビアス博士ことモリナは痩せています。
一方、キングズレーとウィテカーが今と余り無いのが面白かったです。
少女時代のSILを演ずるミシェル・ウィリアムズはこの後テレビで人気が出、後に『ブロークバック・マウンテン』で共演した故ヒース・レジャーとの間に子供を生みました。
彼女も当時と今tで違和感が少なかったのが予想外でした。


BDとしての画質は及第点でしょう。
特に高画質ではありませんが、解像度も質感も色も不満無く観られました。
音は初期のドルビーデジタル作品(海老名ではDTSで観ました)で、LDも持っています。

写真右はパンフレットです。
LD版リリース時のHIVIでは、「包囲感に優れている」といった評価でしたが、今回視聴して同感でした。
時折重低音も入っており、最近の映画に近い音質だと思います。
クリストファー・ヤングの地味で雰囲気重視のスコアもサラウンドし、映画に貢献(しようと)していました。
特典もSD映像ながらそれなりに入っているようですので、時間を作って観たいものです。

スピーシーズ 種の起源 [Blu-ray]

スピーシーズ 種の起源 [Blu-ray]


SILのマケットもAmazonで売られているのですね。

Species Maquette: Species

Species Maquette: Species

リアルな造形で定評のあるSideshow Toysによるもの。
私もここの製品である『ロード・オブ・ザ・リング』のサウロンやら、『レジェンド/光と闇の伝説』の闇の王やらを持っているので、恐らくこれも完成度が高いでしょう。
重さも6kgですか。
うーん、もう置く場所が無いです(お金も無いですが)。


本作でのギーガーのデザイン集はこちら。

スピーシーズ・デザイン

スピーシーズ・デザイン

古本でしかありませんが、随分と値崩れしているので、この際買ってしまおうか思案中です。


ところで、当時注目株だったスティーヴ・ジョンソンは、リック・ベイカーの弟子。
ジェームズ・キャメロンの『アビス』で宇宙生命体を作るなどし、一時期仕事も多かったのですが、近年はすっかりご無沙汰しています。
遊星からの物体X』や『レジェンド/光と闇の伝説』のロブ・ボーティン、『ザ・フライ』のクリス・ウェイラスと、1980年代、1990年代前半くらいまで活躍したスター・メイクアップ・アーティストの多くは、才能豊かであっても淘汰されてしまいました。
今ハリウッドで生き残っているメイク・アーティストたちと言えば、近々『ウルフマン』が公開される、ジョンソンとボーティンの師匠リック・ベイカー率いるシノヴェーション・スタジオ。
ターミネーター』で人気が出て、『アイアンマン2』が待機している故スタン・ウィンストンスタン・ウィンストン・スタジオ。
トム・サヴィーニの弟子だった3人が立ち上げた、タランティーノ作品常連のKNB EFXグループの3つくらいでしょうか。
これらは小企業といった規模のようです。
ハリウッドの特撮業界も、個人商店が企業に淘汰されてしまう時代が到来したのです。
本作の特撮を監修したリチャード・エドランドは、当時既に大御所でしたが、ボス・フィルムの資金調達に失敗し、『エアフォース・ワン』が同社最後の仕事となってしまいました。
技術があるだけでは食べていけない、厳しい業界のようです。


さらに余談ですが、本作の続編『スピーシーズ2』は、イタリアのミラノで新婚旅行の際に観ています。
イタリアの映画館はどんなんだろうと思い、言葉が分からなくとも内容が分かりそうな映画で面白そうなのを、と選びました。
場内はいささか古風な装飾などされていたものの、画面は明るく、DTSサウンドも切れ味があり、設備は良かった。
面白かったのは、イタリア語吹替えは覚悟していたものの、クレジットの類まで全てイタリア語になっていたこと。
まるでイタリア映画になっていました。
また90分強と短い映画にも関わらず、途中で休憩時間が入っていました。
あれは必ず休憩時間を入れるのか、それとも何分おきに1回入れるのか、不思議に思ったものでした。
映画はさらにエログロをパワーアップしただけで詰まらない出来でしたが、スティーヴ・ジョンソンが作り出したSIL新ヴァージョンは良かった。
但しこの新ヴァージョン、元が男だからなのか、ギーガー風であってもギーガーのデザインでなかったからか人気も無いようで、造形物の類は殆ど出ていないようです。