days of cinema, music and food

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Cleopatra's Dream


ジャズ専門レーベルのヴィーナスレコードから出ているCD『クレオパトラの夢』は、聴き応えがある素晴らしいアルバムになっています。
そしてこれはバド・パウエルの曲ばかり集めたものです(1曲を除く)。


デヴィッド・ヘイゼルタイン・トリオによる演奏は、冒頭のタイトル曲(ご存知の方も多い筈)から聴かせます。
ヘイゼルタインのピアノは終始滑らかというより、微かな緊張感を保ち続けています。


2曲目の『テンパス・フィージット』、3曲目の『グラス・エンクロージャー』と、巻き込まれ型サスペンスのよう。
ジョージ・ムラツのベース、ビリー・ドラモンドのドラムスとの掛け合いも、歯切れの良い演奏もあってスリリング。


耳を澄ましてみると、演奏者たちの体温が、鼓動が聴こえるかのよう。
緊張の中に美しいメロディラインが浮かび上がる様を捉えるのは、とても楽しい。


そう、楽しく緊張する、というのがこのアルバムではないでしょうか。
演奏者たちも、リスナーも、そういった感覚を味わうことが出来ます。


最後の1曲、ヘイゼルタインのオリジナルである『ジス・ワンズ・フォー・バド』で、初めて緊張が緩和されます。
ここにおいてヘイゼルタインは、敬愛するバド・パウエルへの想いを慎ましく語ります。
パウエルの曲を演奏することは、彼にとって特別なものなのでしょう。
それを自らの曲で解放したかのよう。


ヴィーナスレコードらしいこだわりのジャケットも雰囲気があるし、推薦盤です。


クレオパトラの夢

クレオパトラの夢