days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

State of Play


消されたヘッドライン』の金曜21時半からのレイトショウに出掛けました。
場内は十数人の入り。


ワシントンD.C.で麻薬密売に関連したと思しき黒人青年が射殺されます。
翌朝には、下院議員ベン・アフレックの元で民間傭兵会社を調査していた女性が、地下鉄ホームで謎の転落しを遂げます。
旧友の下院議員が巻き込まれた事件の裏に何かあると睨んだ敏腕新聞記者ラッセル・クロウは、編集長ヘレン・ミレンとぶつかりながらも、新米のレイチェル・マクアダムスと共同で真相を追います。


と、これは私が好きなポリティカル・サスペンスの臭いがぷんぷんする作品なのです。
脚本はジョー・カーナハンの弟マシュー・マイケル・カーナハンに、トニー・ギルロイですから、上質のスリラーを期待するではないですか。
おまけに役者は揃っているときています。


元はBBCで放送された連続ドラマ『ステート・オブ・プレイ』だそうですが、私は未見です。
昨年NHK衛星で放送されたそうですから、その内に再放送してくれないかな。
きっとオリジナルはもっと面白いに違いない、と思わせてくれるのですから。
そう、元が連続ドラマなのを2時間強にまとめているのですから、話の展開が速い速い。
息をもつかせません。
物語自体も最近話題のイラク戦争の民間傭兵会社、PTSD、ジャーナリズムの上に立つ企業と、同時代性を盛り込み、しかも今旬なネタを盛り込んでいます。
プロットも二転三転と飽きさせません。


ラッセル・クロウは久々の大当たり役でした。
太って無精髭、髪ぼうぼう、服装もラフで、部屋も仕事場も車も汚い。
ピリピリしているような熱血漢演技を予想していたら、さらりとかわされました。
冷静なのに包容力もあり、レイチェル・マクアダムスとの場面などにそれが良く出ています。
仕事が出来る人はカッコ良いよなぁ、と当たり前の事を思ってしまいました。
暗殺者と鉢合わせしたときの緊張や怯え、人間的な欠点もさらり演じていて、久々に深みのある役作りだったと思います。
彼だけではなく、先に挙げた役者たち、それにジェフ・ダニエルズジェイソン・ベイトマン(自称PRマンって、『ハンコック』と同じかいな、と笑ってしまいました)など、きちんと演技が出来る陣容で臨んでいるのも良いです。


しかしながらこの映画、終幕に失速してしまいます。
いや、終幕までハラハラさせられるのですが、事件の真相がちんまりしています。
特に軍産複合体を敵役に想定しているように見せるというのは、観客の興味を相当引っ張る訳です。
巨悪をどのように糾弾するのだろうか、あるいは邦題通りに事件は闇に葬られるのかと、緊張もさせられます。
なのに、最終的には個人の犯罪に矮小化してしまうというのは、作者たちが策に溺れたと思われても仕方無いでしょう。
だったら疑似餌はもっと小さいものにすべきでした。
大騒ぎしていたのに、実は大したことが無かったという皮肉が利いているかと言えばそうでもなく、風刺劇にしては娯楽が勝ち過ぎ、娯楽映画としては風刺が中途半端に忍び込む。
どっちつかずの結末が大変もどかしい映画でした。
語り口そのものは非常に面白く、もっと上手くやれば傑作になったかも知れないのに、残念です。


それにしてもこの邦題はウソです。
ヘッドラインは消されませんので、意味不明になっていますね。
原題の『State of Play』も単語は簡単なのに訳が難しいので、配給の東宝東和が苦労したのでしょうけれども(パンフレットでは越智道雄が「現状」と訳しています)。


今日から先行上映されている『ターミネーター4』や、既に始まっている『スター・トレック』も観たいなぁ、この後のミッドナイトショウも観たいなぁ、と思いつつ、劇場を後にしました。