days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"2001: A Space Odyssey" on Blu-ray Disc


すっかり扁桃腺が腫れ上がったらしく、喉が痛くてロクに物も食べられず、喋れない状態が続いています。
会社を休んだのは良いのですが、この1週間の殆どが寝てばかりなのでいい加減うんざりしてきました。
余り激しいゲームを自発的にする気も起こらないので、「身体に負担の少ない映画」を観るならば良かろうと、プロジェクターを暖気して上映開始。
映画はスタンリー・クーブリックスタンリー・キューブリック)の傑作『2001年宇宙の旅』。
8月に集中的に購入したBlu-ray Discの内の1本です。
上映時間は多少長くとも、何度も観ていて勝手知ったるし、展開も編集もゆったり、台詞は殆ど無いときています。
これならば脳も疲れないでしょう。
それに本作は私のベスト1映画。
脳内にアルファ波が生まれてリラックス出来るかも知れません。


この映画との最初の出会いは、小学校低学年?だったかに今は無き三軒茶屋書店にて母親にねだって買ってもらった本『SF探検』でした。
出版は学研、著者は後にSFXブームを生み出す中子真治です。
既にジュール・ヴェルヌH・G・ウェルズエドガー・ライス・バロウズの洗礼を受け、さらには幼稚園の時点で父に買い与えられたウェルナー・フォン・ブラウンの伝記によって、(大方の少年がそうであるように)宇宙・ロケットに興味津々だった私にとって、「SFを探検する」なんて大層魅力的なタイトルだったのです。
実際には「SF探検」ではなく「SF映画探検」の本だったのですが、宇宙人、時間、次元といった切り口で様々な洋画のみを紹介してくれた同書は、ボロボロになるまで読み返したものでした。
まだ実家にあるかなぁ。


『2001年』の題名は確か既に知っていたとは思いますが、同書に紹介されていた宇宙旅行、宇宙生命体(スペースチャイルド)といった要素は、即、宇宙少年・SF少年の心鷲掴みです。
お陰でその何年後かに日曜洋画劇場でテレビ初放映された映画本編は、まる難解なものではなく、ごく当たり前のように観られたのです。
類人猿の進化、解説的な前半の宇宙旅行、コンピュータの反乱、異次元への到達、超人類への進化と、素直に受け入れられたのは大きかった。
当時、21時から放送の映画は「30分だけなら観て良いよ。その後は寝なさい」という家族ルールだったのですが、余りの私の食い付きの良さに、この日だけは特例で最後まで見せてもらいました。
他にヘンリー・フォンダ死去で特例で見せてもらい、後に法律に興味を持つようになった『12人の怒れる男』という映画もありましたが、それはまた別の話。


テレビ放送ですっかり感激した私は、その1-2年後に劇場リバイバルされるときに、映画館まで駆け付けたのは言うまでもありません。
弟とその友人と3人、子供だけで普通の劇場に行ったのはこれが初めてでした。
劇場は今は渋東シネタワーに建て替えられた渋谷スカラ座
そこで買ったパンフレットがこれです。

表紙は御馴染みのイラスト。
NASAのイラストレイターだったロバート・マッコールによるものですね。
私も好きなイラストレイターでした。
この人、画集も出していましたが、今やすっかり希少本のようです。

35mmのスコープ上映でしたが、それでも大画面で再見する宇宙旅行、宇宙冒険談は十分魅了してくれました。
やはり前半の説明的な宇宙旅行場面が気に入り、2回目の途中、ディスカバリー号出発までの1.5回観てしまいました。


この映画は数多くのパッケージソフトが出たので、いちいち買っていた方も多いと思います。
かく言う私もその1人。
時は流れ、VHSの映画ソフトが日本でも入手出来るようになりました。
と言っても1本2万円近くしたりするのですが。
私が最初に買った『2001年』パッケージソフトは、ポニーキャニオンから出たデジタルリマスター版なる14,800円のもの。
スコープサイズでしたし、画質も綺麗だったので、結構ご満悦になったものです。
友人らを呼んで泊り込み上映会とかしました。


さらに時は流れ、LDプレイヤーを入手後、スコープサイズのディスクを購入。

写真左上のがそうです。
写真右上のは後に妻となる女性からのプレゼント。
ドルビーデジタル音声初収録のものになります。
時代はDVD-VIDEO時代になり、写真左下のスタンリー・キューブリック・コレクションBOX収録のものも入手しました。
そして今回、BD版を入手したので上映してみたのです。


さすがに140インチの画面では劇場の迫力は再現出来ないものの、眼前間近の小さいスクリーンにより、神格化された映画も親密さが感じられました。
新作映画の解像度は無理としても、ジェフリー・アンスワースの70mm撮影の映像は品があります。
これは最近の映画には無いものですね。
音も高音質ではなくとも、音量を上げてもうるさくありません。
冒頭の『ツァラトゥストラはかく語りき』。
重低音パイプオルガンさえ心地良く感じられるのは、大好きな映画だからでしょう。
まずは現在入りうる最高の『2001年』なのは間違いありません。


小学生高学年になって知ったSF映画専門誌、『スターログ』の1980年頃の号というのを持っていました。
三軒茶屋古書店で買ったのだと思います。
北米で『2001年』のVHSがリリースされたので、それを観ながらの「2001年宇宙の旅の功罪を断罪する」などという座談会企画があったのです。
出席者は伊藤典夫高千穂遥、あともう1人は誰だったかなぁ。
今度自宅で確認して来ます。
で、「冒頭の月や人工衛星がベニア板みたいだ」とか「類人猿の毛が死んでいる」とか「(宇宙遊泳場面の)この呼吸音がダースベイダーになるんだね」とか、色々と面白い話が出ていたのですが、中でもツボだったのが「やたら食事の場面が多いのは何故か」というものだったのですね。
「こいつらよく食うなぁ」、と。
確かにそうだ。


今回、その事を思い出しながら観てしまいました。


人類の夜明け。
草食べてます。


モノリスに触れて骨を武器にすることを覚えてから。
獣肉食べてます。


月に迎うエアリーズ号内にて食べるフロイド博士。
ストロー式宇宙食食べてます。


ムーンバス内でも食欲旺盛なフロイド博士。
サンドウィッチ食べてます。
台詞によると原材料は人工らしいですが。

そういや1番最初、宇宙ステーションに着いたら朝食を食べると言っていましたな。
その後にエアリーズ号でチュウチュウして、その後にこれでしょう。
よく食べるなぁ。


無論、ディスカバリー号の2人も食べます。
宇宙食、まずそうです。


ボーマン博士も最後まで食べます。
こちらもまずそう。
なに食べてるのかな。


類人猿場面はもっと食べる描写が多いですし、エアリーズ号内ではフライト・アテンダントパイロットたちも食べています。


放り投げた骨が変わるのは軍事衛星。
つまり人類は闘争本能を持ちえたまま進化してしまったということですよね。
同時に変わらないのが食欲。
食が無ければ人類は生きていけません。
つまりは食は人類普遍のもの。
だからこそ、どの時代であれ、どこに行っても人類は食事をしている、という描写になっているのでは、などと考えながら観てしまいました。
食事場面は人類の変わらなさの象徴なのでは、と。
如何なものでしょうか。


2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

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