days of cinema, music and food

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青森県南部小旅行記(5)〜まとめ


またまた続きです。


田子町滞在最後となる、9月6日(月)。
9時過ぎに出る二戸発新幹線への乗車やら、レンタカー返却の手続きやらで、6時過ぎに起床しました。
玄関ではナチとチョビがこちらを見ていました。
こちらも猫のミルクちゃん同様に、小さい子供は初めてだとか。
滞在中、娘がどたどた走りまわる度に吠えていたので、日常と違う異変に気付く点で番犬としての才能は十分です。
郵便車など、他人の車が来るだけでも吠えるのですから。
もっとも数年前に以上に気付いて吠えていたのに、家族の誰もが気にせず、車庫内の車の窓を1枚、何者かに割られていたという笑い話があります。
番犬として優秀でも、それを生かすのは結局人間ですか。
滞在中、娘は警戒心が強いナチに突っかかってべしとぶち、大人しいチョビを何故か怖がっていました(^^;


この家では、普段は牛乳を飲みません。
何故なら飼っている山羊から乳が取れるから。
毎朝叔母が乳搾りをし、鍋で沸かして殺菌したものを飲みます。
この朝は山羊の乳搾りを娘に見せようと、叔母・妻子と共に山羊小屋に向かいました。

家で1番乳搾りが上手いのは叔母です。
叔父も全く敵わず、何十分も掛かってしまうとか。
単純に握力だけではないのでしょう。
叔母は手際良く搾り出します。
妻も挑戦しますが、全く出て来ません。

幼少期からこの家に来る度に山羊の乳搾りに挑戦しますが、私も今まで出たことはありませんでした。
ですが挑戦。
おっ!
初めて出て来た。
でも「ぽたり…ぽたり…」と、滴が出て来る程度。
叔母のようにびゅーびゅー勢い良く出ることはありませんでしたが、我ながら嬉しかったです。
まさか乳搾りでちょっととは言え、出て来るとはね。
娘も挑戦しましたが、当然ながら出て来ず。
それでも楽しんでいたようでした。


祖父母・叔父叔母宅での食糧は、自給自足がかなりの割合を占めています。
米は売り物用とは別に、田んぼの一角を自分たち用としています。
その年に収穫した米が、来年の食糧になるのです。
野菜類は敷地内にある畑から取ります。

鶏卵は飼っている鶏から。
青森と言えばかつては林檎が名産でしたが、この家では20年以上前から主力をホップとにんにくに切り替えています。
しかし規模は小さいながらもりんご畑は残っており、収穫された実は工場に運んでジュースにして飲みます。
にんにくは言わずもがな。
こうなると、足りないのは加工食品と魚介・肉類くらい。
これらはさすがに買って来ており、肉類は駄菓子屋にあるようなアイスクリーム用冷凍庫並みに大きい冷凍庫にて保存し、必要分を解凍して食べます。


ここの世帯収入は300万とか400万、と以前聞きました。
今でこそ叔父叔母夫婦の子供たち4人全員が社会人もしくは学生で不在なものの、それでも大人4人が暮らしています。
それでその収入でやっていけるのか。
都心ではかなり低い収入となる筈です。
みろくの滝への道中、叔母は笑って「収入が少ないけれども、これだけ働いていなければ当然だな、とも思う」と言っていました。
繁忙期の6-8月は忙しいけれども、それでも働いているのは大体月20日間くらい。
12月から2月は何もやることがなくて暇なのです。
機械化が進んでいるので、農家が朝早くから夜遅くまで働くというのは、既に昔の話なのだとか。
物価が安く、食料の多くを自給自足でまかなっているので、低収入でも十分に暮らしていけるのです。


水道・光熱費が安く上がっているのも強みでしょう。
水道は地下から。
蛇口を捻ると湯は出ますから、プロパンガスを使用しているのかも知れません。
風呂はソーラー発電に加え、薪を燃やして湯を沸かします。
冬の暖房は居間は薪ストーブが主力。
薪は裏山の木を切り倒し、薪小屋にて乾燥させ、時折薪割りをして入手します。


一方、ネットなどのインフラ事情は都会と変わりません。
インターネットと電話は光回線が引かれています。
もちろん、アマゾンも利用中。
PCのHDDはアマゾンで購入したとのことでした。
DVDなぞなく未だにVHSデッキですが、こちらは殆ど使われていません。
何故なら20年前から町ぐるみでCATVに加入しているから。
映画なぞはCATVで見ます。


生産物の多くは農協経由で売っているそうですが、にんにくの一部は叔父叔母が楽天に出店して売っています。
売り上げはまぁまぁ、とのこと。
出店は長女の案。
注文があると、ネット上の店を管理している娘から叔父の携帯電話にメールで連絡が入り、それを見て発送するのだそうです。
田子のにんにくは既に高級ブランドとして確立されているので、立ち上げは比較的楽だったとか。
これは大きかった筈。
町では他にも数軒、楽天に出店しているそうです。
因みに長女は別に就職していますから、彼女にとっては副業ですね。


この家に来る度に思うのは、人が実に大らかだということ。
かつて友人たちを連れて来たときも、彼らは口々に「リラックス出来て良いなぁ」と言っていました。
自分たちが忙しかろうが、来る者拒まず、暇でも余り構わず放っておいてくれます。
かと言って不親切でもありません。
「あれは面白いよ」と場所を教えてくれたり、時間が空くとどこかに連れて行ってくれたりします。
子供たちが小さい頃は、しょっちゅう喧嘩が発生したり、叔父叔母が叱ったりはあったものの、それでもピリピリした雰囲気は皆無。
以前の長女の就職活動のときも、叔母は「就職活動も1件しかしていないというのに、それしかしない娘も娘だけれども、まぁ何とかなるだろうと言っている親も親だよね」と笑っていました。
農業をしていると、人の手が及ばない天候などに左右されることが多いので、いちいちピリピリしていても仕方ない、出来ることをやったら後は待つしかない、という考えになるのでしょう。
そうなると、細かいことにいちいちくよくよしない性格になりそうです。
こちらが学ぶことは多いと思いました。


今回の滞在は2泊3日と短いものでしたが、娘は見る物触るもの初めてのことが多く、非常に楽しかったようですし、妻も面白かったと言ってくれました。
もちろん、私もそう。
昔ながらの生活をしているところもあれば、非常に現代的な部分もある。
7年振りに訪れた家は、非常に興味深く、且つ楽しいものであると同時に、人としての生き方なども含めて考えさせられるものでした。