days of cinema, music and food

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Dark Shadows

ティム・バートンジョニー・デップの新作『ダーク・シャドウ』鑑賞しました。
公開3週目の日曜11時45分からの回、187席の劇場はおよそ5割の入りです。


召使アンジェリークエヴァ・グリーン)と肉体関係を結んでいた領主バーナバス・コリンズ(ジョニー・デップ)。
だがバーナバスが別の女性ヴィクトリア(ベラ・ヒースコート)を愛したとき、アンジェリークは本性を現します。
彼女は実は魔女で、バーナバスを吸血鬼にする呪いをかけ、棺に閉じ込め埋めてしまうのでした。
それから200年程だった1972年。
偶然蘇ったバーナバスは自らの屋敷に向かいます。
そこは子孫達のエリザベス(ミシェル・ファイファー)とその娘キャロリン(クロエ・グレース・モレッツ)らが住んでいたものの、彼らはすっかり落ちぶれていたのでした。


往年の同名昼メロTVシリーズの映画化です。
と言っても、私はその映画化である『血の唇』をディック・スミスがメイク担当だった…程度の知識しかありません。
本作は北米では酷評状態、興行的にも失敗しましたが、実際に観てみると予想より悪くないし、そこそこ楽しめました。
たまに笑えるところもありますが、それでも中盤でついうとうとしてしまったのが残念。
序盤と終盤は面白かったのですけどねぇ。
バートン&デップ作品では低調な方なのは間違いありません。
また近年のバートン作品らしく、はぐれ者の恨みと孤独を描いた作風はすっかり消失した安全路線…と思わせて、意外な仕掛けもあったとは中々一筋縄ではいかない映画にもなっていました。


主演のデップは実年齢と役の年齢の乖離が甚だしい。
これはもっと若い役者の役でしょう。
白塗りだから多少歳を誤魔化してギリギリOK…かも知れませんが点
でもあの役はもう少しセクシュアルさが必要だったのでは。
近年の『パイレーツ・オブ・カリビアン』等に連なる道化芝居の域を出ていないので、私にはマンネリで多少退屈に見えた演技でした。
ジョニー・デップ芸」という味もあるけれど、そればかりでは食傷気味。
むしろこれはカラフルな女優陣を楽しむべき映画なのです。


バーナバスの末裔にミシェル・ファイファー、その娘がクロエ・グレース・モレッツ
同居している博士にヘレナ・ボナム・カーター
魔女にエヴァ・グリーン
バーナバスの運命の女性にベラ・ヒースコートと、世代も演技もバラエティに富んでいて、見ていて面白かったです。
中でも1番良かったのはエヴァ・グリーン
10年以上前のバートン映画だったら、むしろ彼女が主役になったのではないかという役です。
孤独で愛を求めて叶えられない、そんな妖艶な魔女を活き活きと演じていました。
でもその魔女こそはその実身勝手だという、かつての自分への意趣返しのような扱いなのが興味深い。
鬱屈した「ボクは誰にも理解されない」という役を主役に据え、彼らに同化していた作家バートンは既に居ません。
この映画は、過去の自分への決別とも取れるのです。
そんな意味で、ティム・バートンという監督の作家性を論じる上で、後々重要な映画になるかも知れません。


まぁしかし、クロエ、すっかり育ちましたねぇ。
キック・アス2』でのヒット・ガールはかなり違ったものになりそうです。