ナポリ仕立て 奇跡のスーツ
身体に合ったスーツに袖を通した場合、思わず笑みがこぼれます。
それはナルシスティックな理由からではありません。
心地良さによります。
私が服飾で重要視するのは、デザインと心地良さの両立。
普段からスーツで会社通いをする私にとっては、着心地の良いものに越したことはありません。
とは言うものの、世の洒落者男性の間では、いつの間にやらナポリ仕立てのスーツが注目を浴びているとか。
びっちりとした隙の無い鎧のようなパワードレッシングではなく、どこか隙のある手作りスーツ。
殆ど手縫いの高額なスーツなど夢ではありますが、普段から身体に合う服や靴探しに苦労している身としてはちょっと気になります。
それに何より、その手作りの裏側の世界、職人の世界に興味が沸きます。
ファッション業界に疎い私ではありますが、アマゾンさんに注文して読んでみました。
A4サイズで全部で130ページ弱の本は、見開きを意識したもの。
片面が文章で片面が写真。
男性誌『BRIO』に連載されていたものを元にしたとのことですが、これがかなり興味深い内容でした。
服飾とは文化。
文化とは歴史でもあります。
文化人類学、靴磨きや信号待ちの間の車の窓拭きなどの職業発祥の地がナポリだったことを、初めて知りました。
また、イタリアでの労働者の境遇改善が、仕立て屋といった大変で見入りの少ない「職人」たちを絶滅に追い込みつつあることも知り、非常に興味深いものでした。
それにしても、6歳8歳から初めても一人前の仕立屋になるのに数十年も掛かるとは。
かくも職人とは奥の深いものなのですね。
紹介される各職人の人生も人それぞれ味わい深い。
飽くまでもナポリ仕立てへの批評ではなく、礼賛と愛に満ちた本として楽しめると思います。
印象に残った文章の1つ。
イタリアでは、お洒落することは相手への思いやりと同義だ。(中略)翻って日本では、お洒落することは自分への思いやりと同義だ。だから、皆どこか子供っぽく見える。
大切な人と会うときにお洒落をするのは、本来そういう意味ですからね。
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ナポリ仕立て Sartoria Napoletana -奇跡のスーツ
- 作者: 片瀬平太,池田哲也,緑川智洋
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/10/26
- メディア: 単行本
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