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Future Noir: The Making of Blade Runner


ポール・S・サモン著の『メイキング・オブ・ブレードランナー』及び『メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット』を読み終えました。
昨年11月末に劇場で鑑賞したブレードランナー ファイナル・カット』衝撃の余波は、今だ続いているのです。


1997年3月に発行された前者は、人気があるにも関わらず長らく絶版だったもの。
昨年末の蟹会にて、友人べっくが重い荷物を貸してくれました。
それを読んでいるときに出版を知って購入したのが後者。
『ファイナル・カット』公開に合わせてのアップデートです。


トップ写真は、手前が旧版(帯無し)。
奥側が新版で、帯の下は真っ黒なだけ。
デザインがかなりすっきりしました。


ブレードランナー』が難産の末の映画なのは知られているところです。
監督リドリー・スコットと、スタッフやハリソン・フォードとの確執や、そのスター男優と新進女優だったショーン・ヤングとの不仲、出資者サイドからのプレッシャー、一般向け試写の不評により追加されたナレーションやハッピーエンドが、かえって批評家たちから不評を買ったことなど、製作前後のトラブルエピソードに事欠きません。
実際、逃亡したレプリカントの人数が合わないなど、辻褄の合わない箇所にも現場の混乱が表われています。


それでもこの映画の魅力は、そういった辻褄の合わない箇所すら謎となり、何度も観てしまうことにあります。
製作現場の混乱は映画製作者にとっての恥かも知れませんが、情報過多気味の映像と内容には魅了されてしまいます。


本書はその現場に立ち会っていた映画ジャーナリストによるもの。
スタッフやキャスト、それにフィリップ・K・ディックらの発言や、当時の資料でもって、映画の舞台裏から意味まで解きほぐしてくれます。


品川四郎による文章は誤訳が喧伝されていましたが、確かに誤字・脱字も目立っていてひどい。
カギカッコ(「 」)の付け方もいい加減で、文章中でいつの間にか発言になっていたり、発言が終わっていて文章になっていたり。
文章校正がロクにされていないことを証明しています。
残念ながら石川裕人による追加部分も、カギカッコがいい加減ですが、映画の邦題などは修正されている様子。
それにしてもカギカッコなんて、校正ツールで検索出来るのに。


旧版と新版を比較してみると、まずはノンブル471ページに対して615ページと、150ページ近くの大増量。
但し旧版にあったカラー30ページは、残念ながら今回含まれていません。
また、糸じおりも2本から1本に減っています。


新版の目玉である『ファイナル・カット』に関する新しい章は、120ページもの量。
これは非常に興味深い内容ですので、旧版をお持ちの方も読む価値があるのではないでしょうか。
個人的に衝撃だったのは、『ファイナル・カット』はスコットの要望で画面が明るくなっているということ。
DLP上映の際は見通しの良い映像に感嘆したものですが、それもその筈です。
暗部に隠された数多くの情報を発見して、スコット自身が驚いたのがきっかけとか。
さらには”DVD及びHDディスクの”メイキングとも呼べる文章まであり、これはお腹一杯です。


もう1つの目玉は、長らく本作について沈黙を守っていたハリソン・フォードの最新インタヴューが、巻末の付録に追加されていること。
今や製作当時の記憶も薄れ、物事に対する見方も変わった大スターの現在の率直な考えが伝わって興味深い。


と、これは正にブレラン・マニア必携の書と言えるのです。


メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット

メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット

メイキング・オブ・ブレードランナー

メイキング・オブ・ブレードランナー

Future Noir: The Making of Blade Runner

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