days of cinema, music and food

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Fallout 3


12月4日の発売日にあまぞんさんから到着以来、私の生活を破壊しつつあるのが、Xbox 360版『Fallout 3』であります。
こんな記事を書いたくらいですから、事前の期待は相当に高かったのですが、いやいや、これは2008年にプレイしたゲームの中で文句無しに1番の大傑作。
現在50時間ほど、メインクエストは後半に差し掛かったと思われますが、まだまだ探索していないところも多く、暫くは楽しませてくれそうです。


2277年のワシントンD.C.を舞台にしたSF RPGは、全編レトロ調のデザインが目を引きます。
1950年代に想定された未来が、米中全面核戦争によって破壊されたその後、という凝った設定なのです。
主人公は核シェルターで育った若者。
監視者の目もある管理社会と化した核シェルターの描写も何気に良いのですが、いじめっ子などがいるのも面白い。
未来であろうが変わらないものもある、ということでしょう。
ゲームは主人公の出産から始まり、ハイハイや幼少時の誕生パーティなどのイヴェントが用意されているので、プレイヤーが自然に主人公に感情移入出来るようになっています。
男女の性別と人種が選択出来、外見の細かいカスタマイズが可能となっています。
そして主人公が置かれている核シェルター社会の描写もあって、自然にその世界が馴染んで行くようになっているのも上手い。


ところがある日、主人公の父親がシェルターから逃亡、平和を乱した者として主人公も命を狙われて脱出します。
不自由なく暮らしていた世界の外側は、荒廃した世界。
まずは視覚的に広い原野に圧倒されます(トップ写真はその時のもの)。
右も左も分からないまま放り出された主人公は、プレイヤーそのもの。
父親を探すべく行動を開始する・・・と、メインとなるプロットは万国共通に感情移入し易いものとなっています。


開発元は以前にも紹介した秀作『オブリビオン』のベセスダ・ソフトワークス
自由度の高さが売りだった同作同様に、こちらも相当なもの。
しかも会話の際の自分の台詞の選択によって相手の反応が分岐して行くようになりました。
魔界オブリビオンの脅威に飲み込まれそうな架空世界を作ったから、後はお客さんの好きなように遊んでね、世界を救っても良いし、適当に遊んでも良いし、という前作と違い、こちらはメインプロットが分かりやすいので、感情移入もし易い。
ここら辺、私自身が『オビリビオン』以上に楽しめる理由となっているようです。
無論、メインクエストを追わずとも、適当に遊びまくるのも可能となっています。


荒廃した世界に放り出された序盤で一番目を引くのは、兎に角必死にならないと生きて行けないのは確実、ということ。
虫や動物、凶暴な『マッドマックス』世界から抜け出て来たような野蛮人(彼らもまた、必死に生きる人の姿を映し出しています)と、次から次へと襲って来るのに、弾丸は少ないし、銃器は使うと威力が減ってくるし、武具も磨り減っていく。
怪我を治すアイテムは枯渇するし、見つけた食べ物や水といった回復アイテムは放射能に汚染されているし、身体に溜まった放射能をほっておくとやがて死に至るので、放射能を除去する薬を手に入れなくてはならないし…と、とにかくこれだけサバイバル感のあるゲームも珍しい。
この感覚だけに限定して言うと、小島秀夫が『メタルギアソリッド3』で目指したものを遥かに凌駕しています。
敵と戦うだけではなく、終始強い緊張にさらされます。


ゲームシステム自体は『オビリビオン』を踏襲したものとなっているので、自然に遊べています。
但しそれはかなり複雑であることも示しているので、全くの初心者には最初は敷居が高いかも。
インターフェイスもデザインだけでなく分かり安く出来ているので、慣れれば問題無いと思うのですが。


このゲーム、物語やクエスト自体も面白いのですが、やはり独特な戦闘システム抜きに面白さは語れません。
ゲームの視点はFPSもしくはTPSにてプレイして、戦闘もリアルタイムに行うことも可能。
しかし弾丸の無駄撃ちは生死に関わる世界ですから、このV.A.T.S.というシステムの有効利用が必要となるのです。
これは時間をポーズして、敵の特定部位を狙って攻撃出来るというもの。
各部位は攻撃が命中する確立も表示されるので、効率的に部位を選択する必要があります。
また、脚を狙って敵の速度を落とすとか、攻撃して来る腕を狙って攻撃の威力を落とす、などといった作戦も可能。
かなり戦略的に進められるので、面白くてやめられません。


戦略性の高さは相当なもの。
例えば、強力なスーパーミュータントが数体襲って来る場合、最初はこてんぱんに殺されてしまいます。
そこで敵に見付からないようにスニーキングで地雷を仕掛け、建物に立て篭もってライフルで狙撃、敵がこちらに気付いて襲って来たら、まずは地雷が爆発。
脚部にダメージを負わせ、スピードが遅くなったところをさらに追い討ちで手榴弾もしくはアサルトライフル系で銃撃、といった作戦を取ったりしました。
これらはリアルタイムでのFPSもしくはTPSと、先ほどのV.A.T.S.を併用する形になります。
上手く行けば敵がバラバラの肉片になる様を見られます。


そう、このゲームはかなりのグログロ。
日本版は核弾頭を起爆して町1つを消滅させるクエストが削除されたり、人体はバラバラにならないように修正されたりしていますが、人間以外の敵はかなり血しぶきバラバラになります。
脚部を攻撃して殺しても頭部も含めてバラバラになるくらいなので、リアリズムよりも、爽快感や特定部位攻撃というゲームシステムの強調、と考えた方が良いでしょう。
しかし日本版のみCEROではZに指定されているにも関わらず、修正とは残念なことです。
まぁ、その件についてはこんな記事にもしましたので、ま、いっかとは思っていたのですが、実際にゲームをすると、何じゃこりゃ!?と思うところも少なくありません。
つまり攻撃時に人間はバラバラにならないのですが、至るところにバラバラに切断された死体が登場して、そちらは無修正。
CEROの基準は全く分かりません…
理解に苦しみます。
しかしダンジョンならぬ建物内に入ると、凄惨な人体損壊死体があるので、緊張感がいや増すのも確か。
恐怖感や緊張感をユーザに与える点で成功しているし、元々大人向けのゲームなのですからやはり無修正で出してもらいたかったところです。


麻薬を使ってV.A.T.S.のアクション・ポイントを増やして攻撃を優位に進めたり、でも使い過ぎると中毒になったり、などといった冗談きつい設定や描写はごろごろ。
暴力描写や台詞なども含めて、全体的に大人向けのゲームではありますが、ゲームの本質自体も大人向けです。
プレイヤーはゲームを進めていく上で、様々な選択を強いられます。
会話だけではなく、行動もそう。
その結果、良かれと思ってした事が裏目に出てしまう事もしばしば。
人生は選択の連続であり、何かを得れば何かを失う。
そんな当たり前の、しかし重要なことを提示していて、これがゲームへの没頭感を支えているように思えました。
これだけゲームの世界、物語に入り込んだのは相当に久々ではないでしょうか。
しかもムービーは一切無し。
小島秀夫が延々続く台詞と動画でしかテーマをユーザに伝えられないのに対し、何てスマートなことか。
ゲームでしか出来ない手法で作り手たちのメッセージを伝えている点で、本当にハイレベルな作品だと思います。


プレイしていて、ほっとすることもあれば、しんみりすることもあり、またがっかりすることもあり。
ゲームは続くが、やがて旅の終わりが訪れる筈。


やはりこれは、大人向けのゲームなのです。


Xbox360ユーザに関わらず、ゲーム好きには手に取ってもらいたい作品。
RPG嫌いの方も、試しに廃墟世界に飛び込んでみては如何でしょうか。
PS3版も出ますが、Xbox360版は独占でダウンロードコンテンツも出ますし、こちらがお薦めです。