days of cinema, music and food

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"The Kingdom" on Blu-ray Disc


昨年末に届いていたというのに、ようやく今頃になって観ました。
キングダム/見えざる敵』です。


映画は2年前に劇場で観ていて、中々面白いと思いつつもハリウッド娯楽アクション映画の限界も感じていました。
今回再見して同じ不満を持ちつつも、そういった欠点を承知で観るので、劇場での初見以上に楽しめました。


ご贔屓ジェイミー・フォックスはすっかりこの手の硬派な役どころが多くなりましたね。
こういう役も良いですが、再三言っているように彼のコメディを見てみたいです。
このところよく見かけるジェイソン・ベイトマンは、情けない役を無難にこなしています。
彼とは後に『JUNO/ジュノ』で夫婦役で共演するジェニファー・ガーナーは、やはりTシャツ担当という女性蔑視に見える役で勿体無い。
もっとも、終盤に肉弾戦という『エイリアス』とダブるかのような見せ場も用意されてはいますが、それ以外には左程見せ場はありません。
味わいある名脇役クリス・クーパーの演技は如何にも彼らしい。
特にサウジアラビア行き飛行機内で、その性格が分かる場面が良いです。
そうそう、石油とアメリカを扱ったもう1本のハリウッド・スリラーの佳作『シリアナ』にも、クーパーは出演していましたね。
バーン・アフター・リーディング』で善人且つマトモゆえ、ヒドい目に遭う役だったリチャード・ジェンキンスが、こちらでは硬派なFBI長官を演じていて、演技力の幅広さを見せてくれます。
映画によってまるで印象が違っていて、興味深い俳優です。
フランシス・フィッシャーも1場面だけ登場するジャーナリスト役で印象的。
かように役者は揃っているのは、監督ピーター・バーグが役者でもあるからなのでしょう。


私個人が一番印象に残ったのは、サウジ側の警官であるアル・ガージー大佐を演じたアシュラフ・バルフムです。
良心ある警官は何処も同じ、といった象徴的役柄なのですが、任務に忠実でありながら人情家でもある様子を、抑え気味の演技で見せてくれます。
彼の部下役を演じたアリ・スリマンとは、パレスチナ側から自爆犯を描いた『パラダイス・ナウ』で共演していますね。
だからこその本作での抜擢だったようですが、こちらも観てみたいものです。


今回の鑑賞で興味深かったのは、主人公であるFBI捜査官が政治的手腕にたけていること。
サウジ側に圧力を掛けてFBIを現地に赴かせる行動に出るのですが、目的の為ならば手段をいとわない頭脳派でもあるとして、中々興味深い性格付けがされていました。
この手の政治スリラーには打ってつけではありますが、微妙な問題を扱っているからこそ筋肉バカではない主人公を設定したのでしょう。
だからこそ勿体無いという印象が強い映画なのです。
負の連鎖を予感させるラストなど光る箇所もあるだけに、マシュー・マイケル・カーナハンの脚本は、政治的な主題への突っ込みの甘さが余計に気になってしまいます。


終盤の20分にも及ぶアクション場面はドキュメンタリ・ルックが生きて迫力満点ですが、どうせならば痛さが伝わるようなさらなるリアルさを盛り込んでもらいたかったところです。
映画のプロデューサーの1人は、ピーター・バーグが出演した『コラテラル』の監督マイケル・マン
マン譲りのアクションに見えますが、マンとの大きな違いは「痛さ」です。
鑑賞後に映画の印象が娯楽寄りで軽く感じる一因となっている気がしました。


BDとしての画質は平均的でしょう。
元々劇場でもフィルム・グレインが目立つ映像でした。
解像度も普通で、安心して観られます。
音は序盤の大型テロ場面の爆発音や、銃撃音など、結構迫力があります。
今回は観る際に、音量をいつもの程度しか上げなかったのが良くなかった。
銃撃音に迫力を感じなかったのです。
しかし後半に「こりゃ、台詞に合わせてもっと音量を上げても良いのではないか」と気付いたので(←遅過ぎ)、結構な音量を上げたところ、マシンガンの音など重低音がかなり出る。
スピーカ前に飾ってあるサウロンの首が、振動で脱落しました(^_^;
壊れなかったのが幸いです。
それでもBD『007/慰めの報酬』の切れ味鋭い音を聴くと、物足りなく感じてしまいました。


特典や音声解説も面白そうなので、そちらも時間を作って観て行きたいと思います。