days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Million Dollar Baby


このところどうも風邪の具合が思わしくないので、仕事も定時で切り上げ、さっさか帰宅しています。
夜は遊び回れないし、スポーツクラブにも行けません。
でも、家で何かしら遊んでいるのだから、それも良しとしましょう。
この機会ですから、週末前に自宅でゆっくりと映画を観るのも良いものです。


DVDを購入してから暫く経ちますが、ようやく観ました。
クリント・イーストウッドの傑作、『ミリオンダラー・ベイビー』です。


劇場では既に観ています。
当時書いたレヴューを読み返すと、この作品への入れ込みようが思い起こされます。
が、一度観たことがあると観直すときにちょっと覚悟がいる・・・と思っていたのですが(って、映画をご覧になった方にはお分かりになるでしょうが)、実際に観直してみるとそうでもありませんでした。
何故かと言うと、主人公たちがどんなに過酷な目に遭っても、映画は彼らを優しい眼差しで見守り続けるからです。


でもその「優しさ」って、軟弱なそれではないのですよね。
さらに主人公らが示す優しさって、相手を思いやってのこと。
それが自分の望みとは違っても。
イーストウッドは「親子愛の映画だ」と言っていますが、私自身の解釈は違います。
単純に親子とかの枠ではない、純粋に「愛」を描いた映画だと思います。


「愛」とは相手の為に自分の意思を殺すことでもあります。
実際にその立場になったら、あなたは出来る?と映画は問いかけています。
その意味では厳しい映画でもあります。


最初に観たときも思ったのですが、この映画は完全にハードボイルドですね。
ほら、オリジナル・ポスターもそんな雰囲気でしょう?
心に傷を負って生きてきた主人公は、さらに深い傷を負います。
でも、生き続けなくてはなりません。
この映画のテーマの1つは「生きること」なのです。


舞台となるボクシング・ジムには「Tough ai'nt Enough」(タフなだけじゃ足りない)とあります。
トレーナーのフランキーは、マギーに「Protect yourself」と言い続けます。
過酷な人生を生き続けるには、自分の身は自分で守るしかないのだ、とも取れます。


今回再見して新たに思ったのは、さらにこの映画のテーマは「希望」ではないか、ということ。
どんな境遇でも、希望は持ち続けるものだ、と言ってくれているようです。
それも力説するのではなく、さりげなく。


物語の構成なども全く隙の無い映画ですが、キチキチではなく、どこかゆとりがあります。
時折挿入されるユーモアのお陰もありますが、全体に奥ゆかしい自信が感じられるのです。


それにしても美しい映画です。
シンプルで虚飾の無い佇まい。
光と影の映像。
繊細で静かな音楽。
クリント・イーストウッドの顔の深い皺。
ヒラリー・スワンクの輝くような純粋な笑顔。
モーガン・フリーマンの心に響く低い声。


いずれまた観直したい映画です。