days of cinema, music and food

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Bring Me the Head of Alfredo Garcia


買ってあったけど観ていなかったDVD『ガルシアの首』をようやく観ました。
最近は定時退社でも、諸般の事情でDVDで映画を観る時間が無かったので、ゴールデンウィークに是非何本か観たいものです。
って、買ったけど観ていないのは『21グラム』、『マイ・ボディガード』、『カジノ』など、どれも男臭くて重い映画ばかり。だから観ていなかったのか。
ヘビーなGWになりそうです・・・。


さて、この映画、言わずと知れたサム・ペキンパー晩年の代表作の1本な訳ですが、見直すのは十数年振りでしょうか。TBSで深夜放送されたものを録画して観て以来です。テレビ版は吹替え(主役に内海賢二!)&20分以上もカットされた版ですので、オリジナル版は初見となります。


学生だった頃は、ペキンパーらしい暴力アクション映画を期待していたのに、前半がちんたらして進まない、かったるい映画だなぁ、という印象でした。後半は期待通りのアクションとなり、ラスト近くの主人公ベニーが大金の詰まったアタッシェ・ケースを持つショットで「ジャカジャンッ」とギターが入るタイミングに痺れ、冷たいラストショットに慄然としたのでした。


今観ると、2時間近い映画の内、前半の1時間以上がドラマに費やされ、アクションは後半40分くらいですが、その前半で全く退屈しませんでした。
うらぶれた酒場のピアノ弾き、ベニーと、その恋人エリータの描写は心に染みます。何となくピクニック気分で「首」探しに出かけるも、エリータがバイカー2人に犯されそうになる辺りから、暗いムードになっていくのも良い。やがて運命の歯車が凶暴に回り出し、ベニーは翻弄されますが、最後には自ら落とし前を付けます。


ピアノ弾きが何で後半になるとやたら強いのか分かりませんでしたが、彼は軍隊に属していたのですね。テレビ版ではカットされていたのでした。きっと軍務経験などもあってアメリカが嫌になって、メキシコに流れ着いたという設定なのでしょう。でも夜でもサングラスをして、白いスーツに派手で下品なガラシャツを着て、本人はカッコ付けてるつもりでも、実はみっともない小者。これも今回気付きました。


エリータはそんなベニーを見透かしていますが、欠点をも包み込んでくれる聖母のような娼婦が、ペキンパーの理想の女性像なのでしょう。イセラ・ベガはこの作品しか知りませんが、肉感的で情感的で、とても良かったです。


でもこの映画は、やはりベニー役のウォーレン・オーツでしょう!
マッチョなつもりでも運命に翻弄される男が、最後には成長して本当にヒーローになる姿。
惨めでうらぶれた男が輝く瞬間を演じていて、とても良かった。またそのきらめきを収めたペキンパーも素晴らしい。


映画としては全体に弛緩しているところもあるし、全体に捻り過ぎたところも目立ちます。レイプしようとしたのに、平手打ちをくらってメソメソするバイカー役クリス・クリストファーソン。プロの殺し屋なのに、公私共に相棒が殺されたと知ると、急に弱くなるロバート・ウェッバー。
でも良いんです、これで。
器用になれない、無様なまでに純粋。
このいびつさが魅力となっているのは間違いありません。
何故なら、それがペキンパーだからです。
この映画が未だに一部のファンによって愛されるのは、そういった理由によるものではないでしょうか。


ところで序盤のベニー登場場面の酒場にいたのは、『ゲッタウェイ』でアタッシェ・ケースをくすねて、スティーブ・マックィーンに列車でぶん殴られていたカーボウイハットのお兄さんでは???


さてこのDVD、公開当時のパンフレット、チラシ、プレスなどが復刻&縮小されたものプラス解説書(1990年に出たLD収録の再録)と、サントラCDも収められています。
CDはまた今度聴くとして、文章類の資料が豊富なのは有難いことです。
本編に収録された音声解説も最初の20分だけ聴きましたが、興味深い話もいっぱい。
映像も綺麗でしたし、音は5.1チャンネル版はアフレコみたいなところもあってちょっと違和感があったし、サラウンド感も殆どありませんが、気合の入ったDVDには違いありません。


キング・レコード、偉い!