days of cinema, music and food

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Collateral


マイアミ・バイス』祭りだとばかり、マイケル・マンの前作『コラテラル』をDVD鑑賞。
といっても通常通りに本編を観るのではなく、マンの音声解説がお目当てです。
こだわり派の彼ですから、きっと面白い話が出てくるに違いない、という期待通りでした。


こだわり派のマイケル・マンは、感覚的なこだわりではなく、予想通りに理論的なこだわり派でした。
無論、独自の美しい夜景などの映像は、彼自身の嗜好を映し出した感覚的なものでしょうが、細部に関するディテールに対する執念は半端ではありません。


映画は、ジェイミー・フォックス演ずるタクシー運転手マックスが、トム・クルーズ演ずる殺し屋ヴィンセントに振り回される話です。
現実離れした部分も見える脚本ですが、珍しく持ち込まれた企画の他人の脚本を、独自の映画に仕立てているところがさすが個性派監督の俺様マン様。
元の脚本ではニューヨークが舞台だったのを、マンが好んで舞台に取り上げるL.A.に変更した話や、マン自身は実はシカゴ育ちだったことなど、彼の喋りで明らかになっていきます。


音声解説は撮影裏話が多く出るか、場面場面の意味付けを解説するか、あるいは両方共バランス良く出るか、人それぞれですが、マンの解説はどちらかと言うと場面の意味を解説する方に重点が置かれていたように思えました。
そしてトム・クルーズジェイミー・フォックスらキャストへの賛辞。
余ほど彼らの演技が気に入っていたようです。


もちろん裏話も忘れていません。
夜景場面で使われたハイビジョン撮影は余ほどお気に入りのようで、「このショットの遠景はフィルムでは絶対写らない」といった話が幾度となく出てきます。
劇場で観たときはビデオ映像ならではのモーション・ブラーとかが気になったのですが、自宅DVD鑑賞がそもそもヴィデオ映像ですから、余り違和感なく観られました。


劇中に登場する警官やボディガードの多くが本物だったのは意外です。
堅苦しそうな日本の警察だったら、こんなに協力はしないでしょうね。
さすが映画に協力的なL.A.です。


トム・クルーズへの格闘指導は元SASアンディ・マクナブ
元同僚のMさんは特殊部隊好き。
「今、何を読んでいるのですか?」という質問に
「アンディさんです」と答えた彼が見せてくれたのは、アンディ・マクナブの軍事小説でした。
とまれマイケル・マンとは仲が良いのね。
ヒート』の市街戦場面の監修もアンディさんだし。


特典映像にもあったのですが、殺し屋ヴィンセントの故郷の写真とか、劇中で一切登場しない設定なども実は作り込んでいたようで、こういったこだわりが半端ではありません。
でもこういったこだわりがあるからこそ、映画などという相当に手の掛かるモノに力を注ぎ込んで作り上げてしまうのでしょうね。
ガンマニアを夢中にさせているという銃器や銃撃の描写も、リアリズムへのこだわりの1つではないか(無論、好きなのだろうけれども)という意味で納得しました。


普通のマイケル・マン作品とは一味違いますが、中々楽しめる映画だと思います。
ジェイミー・フォックスが素晴らしいですしね。
フォックスは『マイアミ・バイス』よりもこちらの演技の方が見応えがあります。


いつの間にか2枚組でも1,500円で出ていますので、お買い得ではないでしょうか。