Black Sanday
20年振りくらいに観直しましたよ、ジョン・フランケンハイマーの大傑作『ブラック・サンデー』を。
ようやく国内盤DVDがリリースされた訳ですが、『ミュンヘン』DVDリリースに合わせたものだとしても(両方共にパレスチナ・ゲリラ「黒い九月」が出て来るしね)、特典がまったく無くても、ジャケットがダサくても、日本劇場未公開であっても、ホームシアターで観られる幸せ。
家庭劇場バンザイ!です。
モサドのカバコフ少佐(ロバート・ショウ)は、パレスチナ・ゲリラ「黒い九月」が新年のアメリカで大規模なテロを画策していると知ります。
しかし場所も方法もまるで分かりません。
一方のパレスチナ側は女戦士ダーリア(マルト・ケラー)を送り込み、ベトナム帰りで精神に異常をきたしたパイロット、ジョン・ランダー(ブルース・ダーン)を使って着々と計画を進めます。
序盤のモサドによるパレスチナ・ゲリラのアジト襲撃、病院内での暗殺計画、マイアミ市内での一般住民巻き添えの市街戦と、見せ場に事欠きません。
アクションとサスペンスがぎっしり詰まった素晴らしい娯楽映画に仕上がっています。
トマス・ハリスの原作は、彼らしく追う者、追われる者を描いた小説です。
但し後のハリス作品と違ってプロット主体でなく、ランダーの過去や精神状態を主体にした心理小説となっていて、異色の出来です。
映画を先に観ていたので、病院内での暗殺シークエンス、市街戦などが小説版には無く、その地味さに驚いたものでした。
ジョン・フランケンハイマーの演出は骨太で、やや軟弱臭のする原作を超えた素晴らしい映画に仕上げました。
徹底して押さえたリアリズムと非情な描写で通しますが、それがクライマックスの大アクションに雪崩れ込む呼吸はプロの監督の成せる技。
ラスト45分の緊迫感の盛り上がり、二段構え三段構えの手に汗握るクライマックスは、最近の映画でもお目に掛かれません。
そりゃ特撮がチャチだとかありますが、そんなのは小さな瑕疵でしかない。
これぞ硬派サスペンス・アクションの大傑作と呼ばずに何と呼びましょうか。
ジョン・ウィリアムズの音楽も元気。
サスペンスとアクションに時折優雅な旋律を忍び込ませて好調です。
最近は妙に凝った殆ど無意味なオーケストレーションをしていると批判を受けていますが、この頃は徹底して映画に奉仕していたのですよね。
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そういえばフランケンハイマー晩年の秀作『RONIN』のクライマックスって、この映画のクライマックスのプチ・セルフ・リメイクなのかも。
久々に『RONIN』も観直したくなりました。
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