days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

それでもボクはやってない


周防正行11年振りの新作の鑑賞。
痴漢と間違われた青年の冤罪に対する闘いを描いた作品です。


いや、その言い方だと誤解を受けるかも。
正確には痴漢冤罪裁判そのものを描いた作品と言いましょうか。


ブランクが長い監督はナマクラになる人も多いのですが(ジェームズ・キャメロンは大丈夫なのだろうか・・・?)、ブランクを感じさせません。
才気だけではなく、映画監督としての基礎体力が肉体に備わっている人なのでしょう。
最初から最後まで、2時間20分余の長丁場を飽きさせない手腕はさすがです。


半ば予想していましたが、とにかく正攻法で描いた映画。
日本の裁判は、被害者・加害者であろうと一般市民をないがしろにして、淡々と進行していくものと思っていましたが、その私の想像通りの世界でした。
細かいディテールを積み重ねて、一種ハウトゥものに仕立てる脚本も上出来。
カフカの悪夢のような日本の刑事裁判の問題点を浮き彫りにしています。


主役の加瀬亮は素晴らしい役者ですね。
硫黄島からの手紙』で初めて知ったのですが、こちらの方が主役ということもあって演技力がよく分かる。
彼の描き込みが浅いという批判もあろうかと思いますが、どこか無色透明でもある若者を通して裁判を描く試みはうまく行ったのではないでしょうか。


ただ不満を覚えたのは、かつて法律を学んだ者からすると驚きが無いこと。
これは映画を観る際の前提知識量にもよるのでしょうが、プラスアルファが欲しかったところです。


とまれふつふつとした静かな決意と力がみなぎっている作品として、お勧めの映画ではあります。