days of cinema, music and food

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Das Leben der Anderen


前々から観に行きたかったのに行っていなかった『善き人のためのソナタ』を、ようやく観て来ました。
アカデミー賞外国語映画賞を受賞したので混んでいないかと戦々恐々でしたが、13時45分の回は7割の入り。


映画は壁崩壊前の東ベルリンが舞台。
主人公は国家保安省(シュタージ)局員。
国家に忠誠を誓い、冷徹に監視・盗聴・尋問を行う、優秀な大尉です。
その彼が劇作家と女優のカップルを監視する内に、変化していくという物語。


序盤はゆったりしていますが、徐々に緊張感が増してきます。
特に後半は手に汗握る展開。
派手な場面は無くとも、物語が、登場人物たちの心理が、緊迫感を醸し出していきます。
その先にある暖かな人間性と感動。


見事な脚本と演出。
素晴らしい役者たち。
ユーモアを忘れない精神。
これは心に残る映画です。


愛を交わす恋人たちに感化され、自分は太った娼婦とセックスし、仕事が終わると出て行こうとする彼女に向かって「まだ行かないでくれ」と言う局員の悲しさ。
彼もまた、抑圧された孤独な人間だったのです。


局員役ウルリッヒ・ミューエは初めて観ましたが、抑えた演技がぴったり。
自身もシュタージに監視され、何と妻に20年以上、調書にして300ページにも渡る情報を密告されていたという経歴の持ち主です(妻は調書はシュタージのでっちあげだと否定しているそうですが)。


劇作家役セバスチャン・コッホはミューエと対照的な多弁演技が出色。
この人はこういう役が似合っているように思えます。
今週末から公開の『ブラックブック』も楽しみです。
女優役マルティナ・ゲデックも初めて観るのですが、彼女も良かった。
腰周りなど体格はどっしりがっちりしているのに、儚げな内面を持つ役で。


私が大好きなモニカ・ベルッチといい、彼女といい、ヨーロッパ女優はハリウッド女優の人工臭さが無く、美しくとも生活感があって良いですね。
いや、女優に限らず男優もですが。


ハリウッド・リメイクの企画があるそうですが、是非やめてもらいたいもの。
シドニー・ポラックアンソニー・ミンゲラがプロデュースするそうなので、変な映画にするつもりはないのでしょう。
が、この映画のキモはドイツ人の俳優がドイツ語を喋り、実際にベルリンで撮影したことにあると思うのです。
英語を喋る人工的な俳優たちで作り直したら、絵空事になるのは目に見えています。
さてどうなることやら。


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