days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Babel


アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの新作『バベル』初日の鑑賞です。
前作『21グラム』は感心したので期待していましたが、菊地凛子がこんなに海外で話題になるとは予想だにしていませんでした。
ということで凛子ちゃんにも期待して川崎ラゾーナまでお出掛けです。
劇場は1番大きい7番シアター。
15時10分からの回は6割程度の入りでした。


ロッコでの羊飼い一家(そこの幼い少年兄弟がライフルで遊んでしまうことから悲劇を起こす)。
溝を埋めようとモロッコ旅行に来ていたところライフルで銃撃されてしまうアメリカ人夫婦。
アメリカ人夫婦の幼子兄妹を預かっている乳母。
東京都心に父と2人暮らしをしている聾唖の女子高校生。
彼らがやがて繋がっていきます。


軽い衝撃だったのは、日本人同士の会話場面でも日本語字幕が出ること。
これは東京編で撮影に協力した聾団体が試写のときに、東京編のみ内容を理解出来なかったことから署名運動に繋がり、実現したものです。
日本語の会話なので、当然ながら耳の聞こえる私には字幕は不要。
つまり映画鑑賞のノイズになりそうものなのですが、そんなことはありません。
邦画ももっと字幕付き版を上映すれば良いのに、と思いました。


聴けば聾の方々は字幕付きの為に洋画ファンが多いとのこと。
なのに本作が楽しめなかったというのも皮肉なものです。
何故ならこの映画のテーマはコミュニケーション不全なのですから。


さて映画本編は演出や演技の技には唸らされましたが、全体に作為が目立つように思えました。
これは脚本の問題でしょう。
幾らなんでも都合悪く事件が起こり過ぎる。
特に東京編は取って付けたよう。
他の事件との繋がりを予告編でバラすという愚挙を犯した配給会社のセンスもどうかと思いますが(明かされるのは終盤なのに)、このネタバレを知っているのと知らないのとでは、映画本編の内容の楽しみ方も違うのではないでしょうか。
コミュニケーション不全というテーマを描くならば、このような強引なパラレル話法を用いなくとも良かったのではないでしょうか。


この監督&脚本家(ギレルモ・アリエガ)は、デヴュー作『アモーレス・ペロス』、2作目『21グラム』とパラレルに味をしめたのかも知れませんが、次回作ではもうこの手法は結構です。
真価は次の作品で決まりそうですね。


ブラッド・ピットは熱演、ケイト・ブランシェットは台詞が少ないながらもさすが。
ですが乳母役のアドリアナ・バラーザと、不安定なティーンエイジャー役の菊地凛子が特に光っていました。