days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Zodiac


デヴィッド・フィンチャー期待の新作『ゾディアック』初日に駆け付けました。
日本では余り知られていない、1960年代後半から1970年代にかけてサンフランシスコ近郊で起こった連続殺人事件を題材にした映画です。
日本でも10年ほど前に起こった某連続殺人事件への影響が語られていますね。


映画は2時間40分弱と長い上映時間。
何気に凝ったタイトル・デザインもフィンチャーらしい(気付いたのはクレジット終わりの方でした)。


前半は殺人事件及び未遂事件の再現と、事件を追う2人の男、つまりは敏腕新聞記者(ロバート・ダウニー・Jr)、刑事(マーク・ラファロ)を中心に描きます。
後半は主人公がバトンタッチ。
新聞記者の同僚である風刺漫画家(字幕ではイラストレーターみたいになっていて、違和感がありました)のジェイク・ギレンホールが事件に取り付かれていく様子を描きます。
それと同時にこの3人の男の人生を狂わせていく様も描かれて行きます。


フィンチャー作品は1作おきが素晴らしい、の法則は今回も生きていました。
これは秀作です。


フィンチャーの映画でも『セブン』とは随分と様相が違い、基本的には実録ドラマ調。
派手な場面も無く、これみよがしの凝ったショットも少な目。
しかしながら登場人物の感情の流れが非常に説得力を持って描かれており、見応えがあります。
事件を追えば追うほど謎が謎を呼び、迷宮の闇へと落ちて行く。
映画への批判に長い上映時間を挙げている人もいますが、この上映時間は感情と時の流れを描くのに必要な時間でした。


全編ハイビジョン撮影された映像は美麗で木目の細かいもの。
フィルムでは撮影不可能は映像も多く、夜の場面でも陰が潰れることも殆どありません。
この灰色こそが事件と心理を象徴しているようで、フィルムではなくヴィデオにしたフィンチャーの選択は正しかったと思いました。


サウンド・デザイナーはフィンチャー作品常連のレン・クライス。
派手さは無くとも細かな音響も聴きもので、音響設備の良い映画館で鑑賞されることをお勧めします。