days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Notes on a Scandal


会社帰りにふらりと日比谷に。
お目当ては明日で上映終了となる『あるスキャンダルの覚え書き』です。


新任の美人美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)に心惹かれた初老の歴史教師バーバラ(ジュディ・デンチ)。
シーバが15歳の生徒と関係を持っている様を目撃したバーバラは、シーバを支配出来ると考える、というイヤーなドラマです。


見ものは現代の名女優2人の演技合戦。
粘着質で冷淡、支配的で独善的、細かに日記を付けるバーバラ役のジュディ・デンチは凄い。
ノートを何十冊も付けているのを観て、『セブン』のジョン・ドウか!と思いました。
監督リチャード・エアとは『アイリス』でも組んでいましたが、あちらでもアルツハイマーが進行して雨の中を独りで歩く様が強烈でした。
この2本の映画を観ると、彼女が人間の醜さや老醜をさら出すことを恐れずに、監督を信頼しているのがよく分かります。


夫(ビル・ナイ好演)と2人の子供がいるにも関わらず、衝動的に生徒と関係を持つ、どこか無垢なところのあるシーバ。
ケイト・ブランシェットは相変わらず美しいけれども、どこか不安定で危うい、子供っぽさの残る女性を演じていて、これもまた巧い。


巧い女優2人が出ているのに、互いの足を引っ張らない、アンサンブルになっているのがまた素晴らしい。


内容はイギリス映画ならでは。
ロウアー・ミドルクラスのバーバラの、自分より上流・下流階級への憎悪がはっきりと前面に押し出されています。


冒頭から緊張感が張り詰めた映画は、これがさらに緊張感が高まっていきます。
賛否両論あるフィリップ・グラスの音楽は、確かに最初から目立っていますし、執拗に緊迫感を盛り上げようとしています。
個人的にはこれはこれでありかと思いました。


決して心地良い映画ではないし、人間のイヤな面を描いたサスペンス・ドラマとして、DVDリリースの際にはご覧になることをお勧めします。


あるスキャンダルの覚え書き (ランダムハウス講談社文庫)

あるスキャンダルの覚え書き (ランダムハウス講談社文庫)

映画「あるスキャンダルの覚え書き」オリジナル・サウンドトラック

映画「あるスキャンダルの覚え書き」オリジナル・サウンドトラック