days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Little Children


仕事中に思い立ち、定時退社後に『リトル・チルドレン』を観に行きました。
19時半からの上映は30人ほどの入り。
殆ど全員が女性でした。
今日は水曜日だったので通常ならばレディース・デーだったのですが、ここBunkamuraル・シネマはレディース・デーをやっていませんけれども。


この映画は期待通り、当たりでした。
ボストン郊外の住宅街を舞台に、不倫に溺れる男女を主人公と彼らを取り巻く人物達を描きます。


まずはアメリカ人役ケイト・ウィンスレットにびっくり。
髪はボサボサ、服装も気にしない。
アダルトサイト見ながらオナニーしている夫に幻滅し、子育てに埋没しそうになる日常に疲れている。
その彼女が恋=不倫でどんどん綺麗になっていきます。


相手役パトリック・ウィルソンは劇中で「プロム・キング」と渾名されるような、絵に描いたような二枚目。
弁護士を目指して受験しつつも、既に2回落ちていて、ドキュメンタリ製作者の妻ジェニファー・コネリーの尻にしかれています。
子育てと家事を担当しながら勉強・・・の筈が、既に勉強は身に入らず、友人に誘われて深夜のアメフト練習に参加し、人妻ケイト・ウィンスレットとの不倫に溺れ、最後も・・・
要は主体性が無く、自分が何をやりたいのかも分からない。
痛い役です。


若かりしときに思い描いていた自分と現実の自分のギャップを埋め切れず、肉欲に溺れていく姿がかなり面白く描かれています。
いや、セックス描写はかなり露骨だし、シリアスな設定にも関わらず、見ていて「あはは、ヤッてる、ヤッてる」ってな感じでどこか可笑しい。


これは映画全体に貫かれているタッチ。
可笑しくて哀しい。
優しくて痛い。
大人になり切れない大人は、こうも滑稽なのか。


監督&脚本のトッド・フィールドは、前作『イン・ザ・ベッドルーム』の堅実なタッチが良かったですが、本作ではユーモアも取り込んで成長著しい。
この両作に通じるのは、役者たちから素晴らしい演技を引き出した点。
主役2人だけではなく、中年の小児性愛者役ジャッキー・アール・ヘイリーと、息子を溺愛する老母役フィリス・サマーヴィルも印象に残ります。


登場人物たちがラストでそれぞれ選択をしますが、この先どうなるのかは分かりません。
希望を持たせるナレーションではあるものの、人生は変わるのか。
断罪するのではなく色々と考えさせるオープン・エンディングは、実は突き放しているのに、ナレーションのせいもあって作り手の優しさをも感じました。