days of cinema, music and food

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El Laberinto del Fauno


メキシコとハリウッドで、一貫してホラー/モンスター映画ばかり撮っているギレルモ・デル・トロ監督&脚本作『パンズ・ラビリンス』を観て来ました。
都心では恵比寿ガーデンシネマで上映ですが、つい最近出来た近所のシネコンでも上映しているのは有難い。
夕方からの回は30人程の入りでした。


1944年のスペイン。
フランコ政権下でファシズムの嵐が吹き荒れるところ。
少女オフェリアは妊娠中で体調の優れない実母と共に山中にやって来る。
そこは冷酷非道なファシストである継父が、ゲリラ相手に戦っている基地なのだ。
オフェリアの前に、牧羊神であるパンが現れる。
お前は地中の王国に居た王女の生まれ変わりだ。
3つの試練を乗り越えたら王国に戻れて、記憶も蘇るだろう、と。
オフェリアは試練を乗り越えようとするが・・・。


宮崎駿の大ファンでもあるギレルモ・デル・トロは、この作品を映像化するに当たって、『千と千尋の神隠し』が念頭にあったに違いありません。
しかしこちらで描かれるのは、苛烈極まりない過酷な現実です。
オフェリアの幻想とも現実ともつかない異界は、残酷な現実を表すかのようにグロテスク。
ヌルヌル、ベタベタな巨大カエルにまつわる映像は『ミミック』を思い起こさせますし、子供食いのモンスターは『ヘルボーイ』に出てきてもおかしくありません。
こういった造型感覚は、デル・トロらしいと言えましょう。
ここらへん、観客を選ぶ映画にもなっています。


最後の試練を乗り越えた先にあるのは何かという解釈で、さらに観客の好みが分かれることもありましょう。
しかし厳しい現実があると人は夢を観るしかないというメッセージを送るだけではなく、その夢を持ち続けるのは自由である救いがある点で、これはテリー・ギリアムの力作『未来世紀ブラジル』と同様のテーマを持った作品とも言えます。


撮影も含めた映画自体の美的感覚も素晴らしいのですが、鑑賞後も暫く胸に残る作品。
久々に見応えのある、強力な映画でした。