days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Hairspray


ヘアスプレー』初日に駈け付けました。
ミュージカル好きとしては見逃せません。
大きめのシネコンはレイトショーなのに、入りは3〜4割とは寂しい。
もっともここの新しいシネコン、大入りなのを観た事がありませんが。
近所に次々とシネコンが出来るのは有難いのですが、どこも最初の何年かは空いている場合が多いように見受けられます。
郊外の市民生活に映画鑑賞という習慣が浸透するまで時間が掛かるのかも知れません。
映画って習慣性のある趣味ですからね。


さて映画はと言うと、ジョン・ウォーターズのオリジナル版は見ていないのですが(本人は冒頭で登場!)、これがかなりハッピーな出来でした。
悪いヤツは成敗され、残る全員の善良な人々は皆ハッピー、未来も多分ハッピー、という楽天的なもの。
ここまで明るいエンディングのミュージカルは、最近では珍しいのではないでしょうか。


ムーラン・ルージュ』は悲劇だったし、『シカゴ』は毒があった。
プロデューサーズ』はハッピーでも皮肉があったし、『オペラ座の怪人』は物悲しい。
ドリームガールズ』はハッピーであってもこれからの別れがある終わり方。


でも『ヘアスプレー』は違います。
とにかく能天気なまでに皆で歌って踊って幸せいっぱいな終わり方なのです。
映画全体を貫く明るさ、陽気さが、歓喜を伴って爆発しています。
ミュージカルは明るくなくては、という向きにはまことぴったりな作品でした。


しかしながら映画の舞台となっているボルティモアは劇中通りに人種差別が激しい町だったし、時代だって1962年ですから公民権運動がこれから激しく盛り上がっていくところ。
ヒロインとその親友の行動は、きっとこれから厳しい矢面に立たされる筈。
でもそれはそれ。
少なくとも映画の中では「強く明るく現実に立ち向かおうよ」となっていて、その思想が映画を一層明るいものとしているように思えました。


ジョン・トラボルタミシェル・ファイファー以下、キャストは皆歌も踊りも達者で楽しい。
トラなんてあんな肉襦袢いっぱいの変装なのに、歳とってもステップや身体の動きが軽やか。
ああいった優雅さが役作りにもなっています。
X-MEN』のサイクロプスことジェームズ・マースデンも、歌と踊りが上手でびっくりです。
クイーン・ラティファも貫禄満点、登場すると場をさらいます。


それとヒロインとその親友それぞれのボーイフレンドが、2人共に歌も踊りもダイナミック。
特に居残り教室からバスに乗って黒人街へと向かうシークェンスは見所の1つです。
若くて切れのあるダンスは良いですなぁ。


違和感があったのは戸田奈津子の字幕です。
言語では「ニグロ」「ニガー」と結構強烈なのに、それを字幕では「ブラック」という当たり障りの無いものに意訳してしまっている。
差別をテーマにした映画なのに、それを無神経にも和らげている。
内容を掴んでいないのでは、と思いました。


さぁって、これでようやくサントラCDも聴けます。
こちらも楽しみ。

映画「ヘアスプレー」オリジナル・サウンドトラック

映画「ヘアスプレー」オリジナル・サウンドトラック