days of cinema, music and food

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The Brave One


監督ニール・ジョーダン、出演ジョディ・フォスターテレンス・ハワードと、私の好きな面子が揃っているスリラー、『ブレイブ ワン』の鑑賞です。


現代マンハッタンでラジオ・パーソナリティーをしている女性が、婚約者と共にセントラルパークで暴漢たちに襲われます。
3週間後に昏睡から目覚めた彼女は婚約者の死亡を知ります。
事件後、精神的外傷を負った女性は、外を出歩くのも恐ろしく感じ、護身用として不法に銃を入手します。
それが街のダニ退治のきっかけとなろうとは。


あちこちで指摘されているように、これはマイケル・ウィナー監督、チャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』の現代版とでも言えるプロットです。
何故アイルランドの監督ニール・ジョーダンが選ばれたのか、映画を観るまでは全く分かりませんでした。
製作総指揮も兼ねているジョディが、ジョーダンの『クライング・ゲーム』を好きだから?


今までの私個人のニール・ジョーダンの印象と言えば、『狼の血族』、『モナリザ』、『クライング・ゲーム』、『ことの終わり』と、人間の心理に対してスリリングに踏み込む上質な映画を撮る監督です。
しかしそこに優しさを忘れてないので、苦味がありながらもどこか口当たりの良さも残ります。
マイケル・コリンズ』という真っ当な伝記映画の力作もありますが、彼にしては異色でしょう。


実際に本作を観てみると、闇の世界に堕ちたヒロインの内面を描いた本作はどこか幻夢的とでも言え、これがニール・ジョーダンらしい。
だから謎の処刑人を追う刑事テレンス・ハワードとの物語も、狐と狸の化かし合いになるのが普通なのでしょうが、そうはならない。
都会の孤独でそっと寄り添う2つの魂として描かれていて、少々難のあるラストも後から考えれば納得の行くものとなっています。


異色なのは、いつも自前の企画を撮るのに雇われ監督となったニール・ジョーダンだけではありません。
製作のジョエル・シルヴァーもアクションとホラーばかり撮っているのに、シリアスな企画を手掛けるとは小さな驚きでした。


ジョディは期待通りの演技を見せてくれます。
この人の中性的で緊張感のある演技は、同世代の他の女優を一切寄せ付けない実力を見せ付けるのに格好なのでしょう。
でも例えば『マーヴェリック』のような肩の力が抜けたようなコメディもたまには観たいです。
テレンス・ハワードは勢いと上手さのある俳優です。
ハッスル&フロウ』のポン引き、『クラッシュ』の製作者、本作の刑事と、どれも多彩な演技。
これみよがしに派手な演技でない場合でも、生きる活力がどこか身体からにじみ出て来ているのを観ているような気がします。


正直に言ってストーリーは余り上手く練れていないというか、どうしたら良いのか製作者達も考えあぐねたような感じを持ちます。
しかし、癒されることの無い深い傷を負ったヒロインの心の旅を描いた映画として観ると、これが中々のように思えました。


最近のハリウッド映画にしては重苦しいスリラーですが、たまにはこういうのも良いですね。