days of cinema, music and food

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Beowulf


ベオウルフ/呪われし勇者』の初日鑑賞でした。
近所のワーナーマイカルシネマズは、映画の日だというのに13:50からの回は4割程度の入り。
もっとも映画の日だというのに、入場料金が1人2,000円だったのですけれども。


高い理由はこれが3-D、つまり立体映画上映だったから。
デジタルでのDLP上映に加え、メガネ付きの特別興行だったからなのですね。
映画業界が今後生き残る為に大画面での立体上映に走るのは理解出来ますが、入場料金まで高くなっては逆効果ではないかという気がするのですが。
昨今のシネコン全盛の理由は、気軽さにあると思うからです。
車でふらり行って各種サービスを受ければ、それなりに低価格で映画を観られる場合も多いのですから。
それが特別興行だからと言って高いのであれば、客足も遠のく可能性があるのではないでしょうか。
1950年代、映画界がテレビによって客を奪われた際に、シネマスコープや70mmといった大画面と、赤青メガネの3-D上映に走った歴史が繰り返されなければ良いのですけれどもね。


さて映画は、近年のロバート・ゼメキス集大成といった趣きになっています。
コンタクト』(1997)辺りから、現実にはあり得ないキャメラワークが時折顔を出すようになり、前作『ポーラー・エクスプレス』ではフルCGI映画を製作。
今回も前作同様に実際の俳優を使ってのモーション・キャプチャー後に、フルCGI映画として製作されています。


製作陣のこだわりは俳優の動きだけではなく、表情の演技にあるようです。彼ら自身がパフォーマンス・キャプチャーという方式によって、なるほど、今までのリアリズム系フルCGI映画に比べて、表情が豊かになったように見受けられます。但し若い女性はまだ苦手ない様子。歳取った王ら老人の方がリアリスティックで表情もよく出ていました。


人物だけではなく、全体にリアリスティックな映像を狙っていて、概ね成功しています。ショットによっては実写と見紛う出来上がり。しかも現実では難しいであろうダイナミックなキャメラワークを多用していて、アニメ映画ならではの映像となっています。


思うにゼメキスは、普通の実写には飽きてきたのではないでしょうか。表現手段として、もっと大仰なものを描きたいのでは、と思われます。


本作も北欧伝説を基にしていて、ニール・ゲイマンロジャー・エイヴァリーら脚本家たちによる大胆な解釈も加えている模様。特にアーサー王伝説からの影響が大きいように思われました。ドラマ部分はダイナミックで繊細さは無く、映像表現のみが主眼となった映画に徹しています。


その進化系として、フルCGI映画による立体映像ということになるのでしょう。画面の構図からして最初から立体映画として製作されたらしい映像は、とにかくよく物が飛び出します。2-Dの映像では、これみよがしなだけの奇妙な構図なだけになりかねません。つまりはこの映画の真の価値は3-D映像での見世物体験にあるのです。


筋骨隆々たるベオウルフ。
どこまでも妖しいグレンデルの母。
凶悪で俊敏なドラゴン。
加えて細かく配慮された音響効果で、今まで観たことの無いような映画体験が出来ます。


家庭でのフルHD環境普及が徐々に進んでいくとは言え、大画面での立体映画はまだ家庭では再生出来ません。
これはある意味、今観るべき映画なのかも知れません。