days of cinema, music and food

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Persepolis


素晴らしいアニメ映画を観ました。
イラン出身のマルジャン・サトラピ原作、脚本、監督による『ペルセポリス』です。
1970年代後半から1990年代までのイランの歴史を背景に、1人の少女の普遍的青春物語にしていて素晴らしい。
いや、何が素晴らしいかと言って、これがアニメならではの映画になっていること。
そして深刻な背景にも関わらず、ユーモアを忘れていないこと。
この2つが大きい。


まずは少女時代の開かれたイランの状況に驚かされます。
スカーフで髪の毛を覆うことなく女性は道を闊歩し、活き活きと発言している。
それが暗い闇に国が飲み込まれていくに従って、徐々に女性達が押し込められていく。
でも元気な彼女たちは、外でも無礼な男たちに啖呵を切ったり、辛らつなユーモアを忘れません。


お酒が禁止されているのに、ひっそりと酒パーティを開いていたり、こっそりとメガデスを聴いたりで、意外なイラン国民の素顔が分かるのも面白い。
限定された時代の限定された状況の物語なのに、一般市民の活力や、怒り、悲しみ、喜びが手に取るように伝わってきます。
それでも美化することなく、どこか冷めた客観的な視点を忘れていません。
主人公マルジはマルジャン・サトラピの自伝的な姿なのでしょうが、意地悪で反抗的。
愚かな恋の顛末も感傷的になりません。
このバランスも非常に良い。


ほぼ全編モノクロ(現在はカラーで、主人公マルジの回想はモノクロという構成)で、太い線で単純化された絵にも関わらず、美しく、時に華やかさや儚さを感じさせてくれます。
アニメ映画と言えばフルCGが殆どの昨今で、セルならではの豊かな表現にアニメの原点を思い起こさせてくれました。


そして終盤に流れる懐かしの名曲『アイ・オブ・ザ・タイガー』の使い方も最高!
未だに頭の中であの曲がぐるぐる回っています。


公開も始まったばかりですので、是非、渋谷のシネマライズまでお出掛け下さい。


ペルセポリスI イランの少女マルジ

ペルセポリスI イランの少女マルジ

ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る

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ペルセポリス オリジナル・サウンドトラック

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