days of cinema, music and food

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28 Weeks Later


ゾンビ映画の変化球快作『28日後...』の5年振りの続篇、『28週後...』初日の鑑賞です。
近場のシネコンTOHOシネマの入りは、土曜初日の昼間にも関わらず、10人程度とは寂しい。
同じホラー映画というジャンルだったら、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』に客が流れてしまうのでしょうか。


監督ダニー・ボイル&脚本アレックス・ガーランドによる前作は、冒頭の無人のロンドン市街地という設定からして印象的でした。
デジタルカメラ撮影によるやや荒れた冷たい映像と、全力疾走ゾンビも強烈。
結局は、ウィルスに感染したゾンビよりも人間の方が始末に悪いという『死霊のえじき』のような展開は、道徳的に真っ当過ぎてやや肩透かしを食らったような気分になりましたが、面白く迫力のある映画には違いありませんでした。


今度の続篇は、時間軸はどうやら『28日後...』と同じくらいの時期から始まります。
暗闇の中で始まる男女の場面という意表を付いた冒頭。
それが実は田舎の一戸建てに立て篭もっている男女で、ロバート・カーライルキャサリン・マコーマックという生活感のあるイギリス人俳優なので、真実味があります。
やがて同じく立て篭もっている仲間が他にもいると分かってきて、それから彼らを襲う惨劇へと流れ込み、あっという間に一気呵成の大迫力の展開になります。


このくだりは凄い。


ハリウッドの大作に比べると明らかにお金は掛かっていないのに、演出と演技だけで緊迫感満点の場面に作り上げています。


時間は28週間後に飛び、ウィルス鎮圧に成功したかに見えたロンドンに、姉弟が戻って来ます。
彼らはカーライルの子供達で・・・と進んでいくのですが、ここから先は言わないでおきましょう。
もし、ホラー映画に「怖がりつつも後味爽快」とか「恐怖と笑いの緩急」などを求めているのであれば、この映画は観ない方が良い。
何故なら、それらの期待は外れるから。
この映画にあるのは・・・人の善意がことごとく悪い事態、悪い展開へと傾いていく最悪な状況。
笑いも無いけれども、救いも無い。
これだけストイックに「恐怖」「緊迫感」のみを前面に押し出したホラー映画が、最近はあったでしょうか。


残忍な描写だけの映画ならば枚挙にいとまがありません。
いや、この映画も確かに血みどろで残忍な描写に溢れた映画ではありますが、それらは必ずしも見せ場として機能しているのではありません。
もし自分がこんな状況に居たら・・・と実感させる道具としての描写が殆どです。
まぁ確かに、ヘリコプターの回転するローターでゾンビの群れをギッタギッタに切り刻む、超血しぶき頭手足胴体バンラバラ場面もあるにはありますが、ほぼそれ以外は絶望感を修飾する為の道具としての残酷描写なのです。
ひょっとしたら病原菌に対抗出来るかも・・・というネタでさえ救いでも何でもなく、最悪の展開、最悪の結末を迎える為にしか機能しないという徹底ぶり。


意外な展開が矢継ぎ早に起き、中盤以降は逃走劇に絞った緊迫感はお見事。
手に汗握る緊張感と、前作以上にパワーアップした迫力。
それらを求める向きにはうってつけの映画に仕上がっています。