days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street


スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』を観に行きました。
人気作品とのことですが、日曜13時からの回は6割程度の入り。
海賊役で近年はすっかりアイドル扱いのジョニー・デップ人気もあってか、殆どが女性客でした。


ロンドンの喉切り理髪屋の有名な話をミュージカル化したスティーヴン・ソンドハイムの舞台(日本では市村正親大竹しのぶ出演で有名ですな)を、ティム・バートンが監督した本映画版。
いやいや、充実度では近年のバートン作品では最高ではないでしょうか。
ティム・バートンのコープスブライド』や『チャーリーとチョコレート工場』の、楽しいけれどもどこか物足りない、ということがありません。
少々物足りなくとも『ビッグ・フィッシュ』も好きでしたが、『スリーピー・ホロウ』以来の大好きな作品となりました。


バートンらしく凝ったタイトル・シークェンスにワクワクさせられます。
妻と娘を悪徳判事に奪われた理髪屋スウィーニー・トッドが、復讐の機会を狙うべく客を次から次へと血祭りに上げていき、証拠の死体は大家のラヴェット夫人が作るミートパイの材料になり、その味が大評判で商売繁盛、というブラックユーモア。


猟奇的内容に相応しく、映像は相当にグロテスクです。
スウィーニー・トッドは歌いながら切れ味鋭い剃刀で次々と客の喉を掻っ切り、真っ赤な血しぶきが画面上に吹き出ます。
いやいや、その凄まじいこと。
バートンらしく全編モノトーンで極力色彩を落とした映像にあって、血しぶきのみが殆ど唯一鮮烈な色合いなのですから。


狂気を感じさせるデップと、彼への叶わぬ恋を秘めるヘレナ・ボナム・カーターという、バートン映画の常連は素晴らしい演技を見せてくれますし、悪役アラン・リックマンもお得意の憎々しい台詞回しと表情。
この3人は歌は上手くないですが、この映画には歌の上手い下手は余り関係ありません。
上手さは主役クラス以外の無名の若手が一手に背負っている感じ。
歌は飽くまでも登場人物の苦悶の感情を表現する手段。
そう考えると、近年のハリウッド製ミュージカル映画の中でも異色作と言えます。


意外だったのはリックマンの腹心を演じるティモシー・スポールの歌声の綺麗さ。
いやいや、今回もやや大袈裟調の演技でしたが、映画や役によって多彩に演じ分けるスポールの上手さを楽しめます。
イタリア巻き舌訛りがいきなり可笑しいサシャ・バロン・コーエンも出番が少なくとも強力だし、タイツのモッコリが強調されているのはボラットだからか?などと下種な勘ぐりさえしてしまいました。


エンドクレジットも終わった上映終了後の館内では、大多数の客が残っていました。
彼女達の呆然とした表情には、期待していたアイドル映画とは全く違ったモノを観てしまった・・・との色がありあり。
そういう映画ですので(大体にして、北米ではR指定、日本ではR-15指定だもんね)、鑑賞の前には御覚悟を。