days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Vantage Point


バンテージ・ポイント』を観て来ました。
公開から既に4週目ですが、小さめとは言えシネコンの小屋は半分の入り。
土曜16時開始の回と丁度映画館にそれなりに客が入る時間帯とは言え、客を呼べるスターが出ている訳でもないのに中々の人気と言えましょう。


スペインのサラマンカ市にて起きたアメリカ大統領暗殺事件とテロを、複数人の視点から描いたアクション・スリラーです。
シガーニー・ウィーヴァー演ずるニュース・プロデューサーの視点。
デニス・クエイド演ずるシークレット・サービスの視点。
エドゥアルド・ノリエガ演ずる地元警官の視点。
フォレスト・ウィテカー演ずるアメリカ人旅行客の視点。
ウィリアム・ハート演ずるアメリカ大統領の視点。
それぞれの時間帯の始まりは、事件直前の12時丁度からになり、同じ事件を全く違い立場から描いていきます。


そして最後に、事件全体を俯瞰する客観的な視点が描かれるという具合。
タイトルは「見晴らしの良い場所」の意味なので、最後のパートがそれに該当する訳です。


こういった『羅生門』的時系列は特に斬新ではありません。
スタンリー・キューブリックの初期の傑作『現金に身体を張れ(現金に体を張れ)』や、最近ではクエンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』など、有名な作品も過去にあります。
それでもエンドタイトルも含めて90分というコンパクトな上映時間に、一切の無駄を省いた描写や展開で、最後まで非常に面白く観ることが出来ました。


これは見せ場を詰め込んだバリー・L・レヴィの脚本だけでなく、ピート・トラヴィスの小気味良い演出、それにスチュアート・ベアードの切れ味鋭い編集によるとことが大きい。
この人、『オーメン』等の頃から、緊張感を盛り上げるのが上手い。
ベアードには『エグゼクティブ・デシジョン』という秀作アクション・スリラーもあるのだし、また監督をしてくれないものなのでしょうか。


最後はいささかご都合主義ですが、そこに至るまでが面白いので許せてしまいます。
アイディアを生かした小味なスリラー、私は大好きです。
逆に言えばこのアイディアを楽しめないと、映画自体を楽しめないとは思いますが。


そう言えば、先に挙げた有名な作品はどれもスリラーですね。
時間軸の操作は犯罪スリラーと相性が良いのでしょう。


出演陣ではクエイドが典型的な良きアメリカ人を演じていて、この人はこういった役がいつまでも似合うなぁ、と感心。
ウィテカーも如何にも善良な市民を演じていて似合ってました。
久々シガーニー・ウィーヴァーはキレと貫禄が嬉しいのですが、余り出番が無くて少々残念。
テロリスト・グループの紅一点アイェレット・ゾラーはどこかで観た顔だと思っていたら、『ミュンヘン』で主役のエリック・バナの妻役だった人なのですね。


劇中のアメリカ大統領の描き方に、現状の政治への批判と理想が込められており、そこもハリウッドらしい映画でした。