days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Atonement


日曜日に行った『つぐない』のご紹介。
シネコンにて18時15分からの回は、公開2日目にも関わらず数人という寂しい入り。
うーん、何でなんでしょ。


映画は全部で3部構成になっています。
大戦前のある夏の1日。
豪奢な屋敷で、姉セシーリア(キーラ・ナイトレイ)と使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)のセックスをセシーリアの妹ブライオニーは目撃してしまう。
ブライオニーは客として来ていた15歳の従姉妹強姦事件の犯人をロビーと証言し、セシーリアとロビーの仲は引き裂かれてしまう。


ここまでが第1部で、時間にしておよそ1時間。
うだる夏の日という設定もありますが、じりじりとした心理描写主体であっても、どうも映画が弾みません。
うーん、ジョー・ライトの映画としては、前作『プライドと偏見』の方が良かったかなぁ。


いや、冒頭は素晴らしいのです。
ブライオニーを追いかけるキャメラワークと、ダリオ・マリアネッリの環境音を模した音楽によって、これは良い映画だぞ、と引き込まれるのですから。


同じ事件であっても視点が違うことによって真実は異なる、という繰り返しの手法は面白くありながら、後から考えると果たして適切な手法だったのかどうか、やや疑問に思えました。


第2部は第二次大戦になり、フランス前線にいるロビーを追います。
圧巻はダンケルクの場面。
延々たる長回しにて、大勢の兵士たちがいる海辺を彷徨うロビーたちを追う映像は凄い。
現代の地獄か、混沌たる現実か。
やがてロンドンにて、罪滅ぼしの為に姉同様に看護士となっているブライオニーの場面に移ります。
この第2部終幕は、いきなりそれまでとトーンが変わります。
幾らなんでもメロドラマティックではないのか、と。


その気がかりは、第3部で明かされる衝撃的な真相によって納得します。
この場面、つい先日亡くなったアンソニー・ミンゲラがインタヴュアーとして登場し、彼に答える役としてヴァネッサ・レッドグレーヴが登場するのですが、ここは彼女の独壇場でしょう。
滋味溢れる演技は素晴らしい。


ということで、この映画、場面によって出来不出来の差があるように思えて、ちょっとちぐはぐな印象があります。
しかし終幕の展開で一気に評価が上がるという、変わった映画でもありました。


音楽さえ複線になっているというのはちょっと驚きです。
明かされる真相そのものは、衝撃的であっても驚きは無く、納得するものなのですが。
その点でミステリ風味さえあるのが面白い。


イアン・マキューアンの小説は『イノセント』を読んだだけなのですが、本作の原作『贖罪』は以前から読みたかった本なので、文庫本を買ってみようかな、という気になりました。


映画「つぐない」オリジナル・サウンドトラック

映画「つぐない」オリジナル・サウンドトラック

贖罪〈上〉 (新潮文庫)

贖罪〈上〉 (新潮文庫)

贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)

贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)


それにしても。
キーラ・ナイトレイは結構好きな女優なのですが、ちょっと痩せ過ぎ。
骨が浮いた身体にゴージャスなグリーンのドレスは、見ていて美しさよりも痛々しさが先行してしまいます。


米国版ポスターのデザインが良いですね(トップ画像)。
男女を引き裂いた妹を真ん中に配置しています。
映画の内容を表していて、秀逸です。