days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

The Mist


土曜日は二子玉川でカレー屋さんアッチャカーナに行ったり、食事後にアバックGRAND新宿店に行ったりしましたが、夕方からは港北のシネコンに行って『ミスト』初日に行って来ました。
こうして書くと、結構な移動ですな。
18時15分からの回は4割ほどの入りでした。


スティーブン・キングの傑作中篇『霧』念願の映画化は、『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』の脚本家兼監督のフランク・ダラボンによるもの。
ダラボンのデヴュー作は短編の『老婆の部屋』で、これもキング原作。
まぁダラボンは『ショーシャンク〜』で監督デヴューする前は、『エルム街の悪夢3』とか、『ブロブ/宇宙からの不明物体』(これは良かった)とか、『ザ・フライ2/二世誕生』とか、グログロ系映画の脚本を書いていたのだから、元々ホラー資質の人なのでしょう。
そういや『グリーンマイル』だって、感動路線を期待していった人がグロい電気椅子場面に仰天した、などという話しを聞いたことがありましたな。


ということで、満を持してのモンスター・ホラーとしての期待作だった訳ですが、結論から申し上げて期待通りでした。


まずは、序盤にある脇役に至るまで手際良い人物描写を経て、謎の霧による怪異までもテンポが良い。
この手のパニックものは序盤の人物紹介で手間取ることが多いのですが、例えば海兵隊員とスーパーのレジ打ち女性との関係とか、目線で分からせてしまう。
年配の女性教師(フランシス・スターンヘイゲン好演)とローリー・ホールデン演ずるアマンダ登場場面、それに冒頭の主人公デヴィッド紹介もそう。
いやいや、こういった人間をきちんと、しかも簡潔に描く映画のなんと少ないことよ。


で、霧もさっさか現われ、ここからは間違い無く9.11.以降の映画でもあります。
霧の中から血まみれ男性が現われたり、宗教と恐怖を盾に人々を争いに引きずり込んだり、悪役を銃による暴力で殺害したり。
兵隊も戦地に送り込んで殺してしまう。
原作を読んだのはもう20年も前のことですが、大よそ小説に忠実な展開と思しいのに、「現代の」アメリカの縮図に見えてしまうのは、原作小説が優れて普遍的アメリカを描いていたということなのでしょうか。
いや、キング自身は読者を楽しませてやろう、怖がらせてやろうといった思いで書いていたのでしょうが、ここまで符号が現代に重なって見えてくるのは不思議としか言いようがありません。


肝心のモンスター描写は手抜き無く、また容赦無く人を襲うのでヒヤヒヤ。
デザインも結構グロいですからね。
こういった場面は間違いなくマトモなホラー映画となっていますので、間違っても配給会社の「この子と約束した 必ず守ると−」などという感動路線による詐欺コピーにダマされてはいけません。
ただ、終幕に登場する巨大怪物は、確か原作では巨大過ぎて上が見えなかった筈。
見せてしまうのは観客サーヴィスなのかも。


賛否両論あるラストは確かに衝撃的でした。
原作のラストでは「希望」というフレーズが有名ですが、映画版は「希望」なのか「絶望」なのか、観客によって大きく感想が分かれることでしょう。
私自身は原作同様「希望」というフレーズを使いたい。
但し、原作では「まだ未来はあるかも知れない」という意味での希望だったのに対し、映画版は「希望を捨ててはいけない」という戒めのように見えました。
人生には最悪のときもある。
苦しいときもある。
でも、だから、生きて行くのだ、と。


ところで主人公が映画ポスター画家という設定になっていたのですが、壁に掛かっている作品が『遊星からの物体X』や『ダーク・タワー』の映画版?など、ニヤリとさせられるものでした。
エンド・クレジットを見ると、『パンズ・ラビリンス』もあったようですが、気付かなかった。
これらは画家ドリュー・ストルザン(Drew Struzan)によるもの。
スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、それにダラボン作品もポスターを手掛けていますね。


本作品のアメリカ版及び日本版の初期広告に使われた絵柄(トップ画像)もストルザンによるもの。
これを趣味の悪い写真コラージュにした日本の配給会社の姑息な方針は残念です。
いくら感動路線で売ったって、ホラー映画には変わりないのですから。


スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)

スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)

闇の展覧会 霧 (ハヤカワ文庫NV)

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The Movie Posters of Drew Struzan

The Movie Posters of Drew Struzan

Drew Struzan: Oeuvre

Drew Struzan: Oeuvre






こちらの公式サイトをご覧になると、「あ!知ってる!」というポスターの絵柄に出会うことでしょう。


まぁしかし、あれですね。
設定はジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』のようにスーパーマーケットに立て篭もるというのに、展開は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を思い出させました。
良かれと思ったことが全て裏目裏目に出てしまうところが。
そんな点でも救いの無い、最近には珍しい中々ハードコアなホラー映画なのでした。