days of cinema, music and food

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The Incredible Hulk


映画の日を公開初日にしてきた『インクレディブル・ハルク』。
レイトショーでの小さい小屋では半分の入りでした。


アン・リーによる前作『ハルク』は、コミックの様式を映画に取り込もうとした、かなりの力作でした。
ただ力作過ぎて疲れてしまったのも確か。
ラストの父子の対決も作り手が力み過ぎて、娯楽映画としては退屈になってしまったのが残念でした。
映画全体の出来としては、そう悪くないと思ったのですけれどもね。
今回、マーヴルは『トランスポーター』シリーズのルイ・レテリエを監督に招聘し、ブルース・バナーをエドワード・ノートンに、恋人のベティをリヴ・タイラーに起用。
前作は全く無かったことにしています。


まずはタイトル・バック数分で、実験によってバナーがハルクになってしまった経緯を簡潔に描きます。
ですから映画はいきなり主人公がブラジルに潜伏していることになっていて、それを嗅ぎ付けた米軍が捕獲すべく特殊部隊を送り込みます。
この手のヒーローものは、ヒーロー誕生までが長いのが通例ですが、本作では全くそのようなことがありません。
狭く込み入った街並みの中での逃亡劇から、ハルク変身での大暴れとなり、掴みはOKです。
アメリカ国内潜入もどうやって国境を越えたのかとかは具体的に描かれずにすっ飛ばし、とにかくテンポ重視の作りになっています。


全体にアップテンポで目まぐるしい展開ですが、各登場人物の動機付けがしっかり描かれているので感情移入がしやすく、娯楽アクション映画として観やすい。
人物描写がしっかりしているのは、脚本も手掛けたノートンの功績が大でしょう。
ノートンとタイラーのラヴ・ストーリーも物語の核となっていて、全体にがっちりした脚本でした。
ドラマ重視で2時間半版を主張した彼も、最終的に折れて完成版は112分となっていますが、これで良かったように思えました。
必要以上に重くならず、観ている間は楽しめる娯楽アクション映画となっているのですから。


バナー捕獲に執念を燃やすのが、ベティの父親でもある陸軍大佐。
演ずるのがウィリアム・ハート
大佐によって超人となり、ハルク捕獲にやはり執念を燃やす特殊部隊隊員がティム・ロス
小柄で細身、戦士としては体格的に恵まれていないティム・ロスを起用することにより、自らのコンプレックスと怪物化への物語を上手く融合出来ていました。
ハートは目的の為に手段を厭わない軍人を冷徹に演じていて、こちらも見事。
娘の心を奪った男への執念とも取れるものとなっています。


最後はこの手の映画らしく1対1の格闘ものとなってしまい、ここは少々見飽きた感がありましたが、全体に出来は宜しかったと思いました。


今回も原作者スタン・リーが序盤に登場しています。