days of cinema, music and food

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Genesis: When In Rome 2007


ようやっと観終わりました。
15年振りのフィル・コリンズ復帰によるジェネシス再結成ツアーの模様を収めたDVD『ホエン・イン・ローマ・・・ジェネシス2007』。
残念ながら日本には来日しなかったので、ホームシアターの大画面で鑑賞してウサを晴らそう、という目論見なのです。


DVD-VIDEOは3枚組の大作で、パッケージはデジパック
ディスクもデジパックも、収録されているちょっとした写真集も含めて、どれも凝った装丁のものです。
ライヴ部分は2枚で2時間半ほど。
全楽曲はCD『ライヴ・オーヴァー・ヨーロッパ』と同じものです。
あちらはツアーでのベストテイク集でしたが、こちらはヨーロッパ公演最終日2007年7月14日の収録。
ローマの古代遺跡チルコ・マッシモ(Circo Massimo)で行われたライヴを、フル収録しています。
ここはローマ最大の競技場だったところで、当時は10万人以上もの観客を収容できたとか。
現在では単なる野っぱらになっているようですが、ヴィデオの冒頭には競技場近くの宮殿も映ります。
今回収録されたライヴの集客は50万人などと言われていて、確かに画面奥までぎっしり寿司詰めの観客が映っていますが、50万人はどうかなぁ。
全公演の合計人数じゃないのかなぁ。


肝心の演奏ですが、映像付きって、やはり見応えありますなぁ。
音だけのCDも良いですけれども、演奏の様子や巨大な建造物であるステージ、聴衆の反応などが視覚で飛び込んで来ます。


特筆すべきはステージのデザインです。
左右非対称で全くユニーク。
よくこんなのを考え付いたな、と感心しきりです。

笑みを浮かべながら余裕で演奏しているメンバーの中、相変わらず表情を変えずにせっせと演奏するトニー・バンクスも微笑ましい。
彼は私の高校時代のアイドルでした。
往年の、キーボードの山に囲まれて演奏する姿もカッコ良かったですが、今回の3台のシンセにシンプルに向かう姿も素敵です。
今回のツアーに関するインタヴューがKORGのページにありますが、プログラミングも全部するとは意外というか納得というか。


フィル・コリンズの声は、高域の伸びや声自体の張りなど、さすがに全盛期には及ばないけれども、曲によっては全盛期を彷彿とさせる熱唱。
それに彼にはサーヴィス精神がありますから。
観客との掛け合い、乗せ方、ユーモアなど、プロのエンタテイナーのお手本です。
マイク・ラザフォードはギターソロは危なっかしくてヒヤヒヤしますが、カッティングやベースのときは安心出来ます。
サポートのメンバー、御馴染みドラムスのチェスター・トンプソンとダリス・スターマーは、益々円熟味も増してびっくり。
特にダリルのギターが泣くなんて・・・と感慨ひとしおです。
チェスターとフィルのこれまた御馴染みドラムスの掛け合いは、今まで最高の出来栄えではないでしょうか。
スツールを叩き始め、ドラムスに移行し、やがて名曲『ロス・エンドス』に雪崩れ込む。
2人の掛け合いも最高ですが、この昔からの構成は本当に素晴らしい。
このライヴの中でも最高の瞬間の1つです。


ヴィデオ監督は、以前に紹介したピンク・フロイドの傑作DVD『驚異』のデヴィッド・マレット。
幅70メートル以上もある巨大ステージをさぞかし威圧感たっぷりに撮影しているのでは・・・と期待していましたが、こちらは意外に冴えません。
140インチで観ると中々なのですが、50インチだとそうでもない。
もっとアングルの工夫もし甲斐があるだろうに、と思ってしまいました。


加えて観ていて欲求不満に陥ったのは、演奏の様子が殆ど見えないこと。
つまり奏者の手元などを見たいのに、それが余り出て来ないのです。
ギター&ベースの2人はそうでもないのですが、ドラマーの2人、キーボードのトニー・バンクスは手元が余り映らず。
特にチェスターとトニーの扱いは酷い。
演奏時のアングルも最低だし、「分かっちゃいない」のです。
それにジェネシスのライヴと言えば、いささかマニアックな話になりますが、ベースペダルです。
そう、エレクトーンの足元にあるような、ペダル式のベース。
これでライヴの音に厚みを加えているのに、映るのは1回のみ。
なんだ、これはぁ。


思い返して見れば、『驚異』も「ステージ」と「聴衆」は映っていたけれども、「演奏」は映っていなかった。
今回も同じ路線だったようです。
これは残念至極。
画質も音質も良かったのになぁ。
往年のライヴ映像はジム・ユーキッチが監督していましたが、彼は「分かっていた」監督でした。
ここぞという時に奏者の手元が映る。
奏者の良さをすくい上げ、見せ場のこしらえ方をわきまえていた監督でした。
その彼の傑作『ジェネシス・ライヴ ママ・ツアー』も、5.1リマスターDVDでリリース予定とのことですから、気長に待ちたいものです。


さて本DVDの売りの1つが、全楽曲のリハーサル映像が収録されていること。
画面左上のアイコン(『デューク』ジャケットのキャラ)表示時に「決定」キーを押すと、リハーサル映像に飛びます。
これが面白いのです。


お気に入りは『リプルズ』。
ホテルの一室でメンバーがアコースティック・ギターを爪弾き、フィル・コリンズが歌い始め、室内を歩き回りながら歌を続けます。
トニー・バンクスのギター演奏姿とは、最近では珍しい。
彼のリラックスした笑顔(写真の真ん中)も素敵です。


特典ディスクは2時間弱にも及ぶ長編ドキュメンタリ『Come Rain or Shine』を収録。
メンバー再会から記者会見、ツアーの構想やステージデザイン、ショウの検討、リハーサルの様子など、一大ツアーが作り上げられていく様子が緻密に記録されていて、見応えがあります。
思ったのは、トニー・バンクスは予想通りの人だったこと(^^;
昔に比べて丸くなったと言っていますが、様々な検討や案に対し、常にジェネシスらしいかそうでないかという観点で意見を述べます。
良い人だけどキツい人、との評判通りのようです。
ジェネシスの中心が彼であり、マイクがトニーとフィルの触媒を兼ねているのではないか、といったところも、何となく伝わったのでした。
そしてフィルとトニーが、ようやっと心を通じ合わせられるようになったのも、ちょっと良い話として心に残りました。


何のかんのありますが、ジェネシス・ファンとしては必携のDVDでしょう。


ホエン・イン・ローマ...ジェネシス 2007 [DVD]

ホエン・イン・ローマ...ジェネシス 2007 [DVD]