days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Runaway


巨匠ジェリー・ゴールドスミスの、恐らくは唯一の自作自演フルシンセ作品、『未来警察サウンドトラックのご紹介です。
プログラミングは息子のジョエル・ゴールドスミス
父息子共演作品でもあります。
限定版「THE DELUX EDITION」を@TOWER.JPで購入しました。


1984年のマイクル・クライトン脚本&監督作品は、ロボットが生活に密着した近未来でロボットを使った犯罪事件を専門に捜査する警官たちの物語。
主演はトム・セレックで、悪役博士役がキッスのベーシストで、どう見ても狂っている(笑)ジーン・シモンズ
セレックも中々頼もしくて良かったし、ジモンズも結構強烈でした。


映画は余りお金は掛かっていなさそうなB級SFアクション・スリラーでした。
それと公開当時、既に内容が時代遅れ気味だったように記憶しています。
が、観客を楽しませようというサーヴィス精神に溢れていて、とても楽しめました。
サイドワインダー・ミサイルのように標的をどこまでも追っていく弾丸からの見た目映像とか(まぁ、サイドワインダーは熱源を追うのでちょっと違いますが)、中盤のラジコンカーみたいな爆弾搭載ロボットとパトカーとのカーチェイスとか、クライマクスの高所での対決とか、見せ場も結構ありました。
翻訳家・評論家の伊藤典夫も、弾丸の主観映像に「あれで納得した」と、いたく感心していたことが思い出されます(SF専門誌『スターログ』での対談でした)。


クライトンの作品は結構ワンパターンですよね。
初監督作品の『ウエストワールド』はアミューズメントパークで故障したロボットたちが襲い掛かる話でしたし、映画化もされた『ジュラシック・パーク』も遺伝子工学で再現された恐竜たちが襲い掛かる話。
本作もロボットが襲い掛かる警官映画。
まぁ、最新科学知識をちりばめながらも、実は王道のホラー/スリラー作品で読みやすい、というのが読者や映画界に人気の理由でしょう。
但し個人的には、読んでいて楽しいけれども、登場人物がどれもマネキンみたいなので読後の充実感に欠ける作家、という認識です。


で、このサウンドトラック。
公開当時にLPも購入しましたが、LPに入っていなかった曲も追加した完全盤です。
当時、ゴールドスミスYAMAHADX7に凝っていたので、音色もモロにDXサウンド
つまりは金臭いデジタル・シンセ音で埋め尽くされています。
DXサウンドは余り好みで無かったのですが、曲が好きだからか、この使い方は好きです。
映画音楽としては巨匠らしく一級品。
手を変え品を変えでスリルとサスペンスを盛り上げますし、間に入る情緒的なサウンドも優れています。


特に聴きモノは、ラジコンカーとの追撃戦を描写した『Rockons』。
当時中学生だった私は、NHK-FMで関光男氏による映画音楽紹介番組で聴き、余りのカッコ良さに痺れたものです。


無駄を省きながらも実験的という、ジェリー・ゴールドスミスの個性は十分出ています。
余り有名ではない作品ですし、巨匠の代表作でもありませんが、御大らしい意欲作として記憶に留めたいアルバムです。


映画を未見の方は、レンタルでも良いのでどうぞ。