days of cinema, music and food

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赤壁 Red Cliff


日曜夕方、近所のシネコンにてジョン・ウーの新作『レッドクリフ Part 1』を観に行きました。
丁度夕食時にぶつかるということもあってか、2つの小屋の内大きい方の回は50人ほどの入りです。


二丁拳銃とスローモーション、舞う白い鳩がトレードマークのジョン・ウーが時代劇、それも『三国志』を撮るとは意外です。
それだけ中国人にとって、『三国志』は特別なものなのでしょう。
二丁拳銃ならぬ二刀流、スローモーションは登場するし、白い鳩も後半にうんざりするほど出て来るので、ウー印そのものの映画となっていました。


さて映画はいきなりの大戦闘絵巻。
逃げる劉備らの軍勢と、追う曹操の軍勢とで、長坂の戦いが始まります。
ここまで時間を割いて映画のバランスは大丈夫なのかい、と言いたくなるくらいのこってり、たっぷり。
趙雲張飛関羽らの活躍をこれでもかと描いて、人物紹介となっています。
全編この調子で、とにかくこってり、たっぷり。
周瑜トニー・レオン)と孔明の琴合奏も、男と男の目線で意気投合、その合奏場面もこってりたっぷり。
終幕の大合戦場面もこれでもかとばかりの見せ場となっていて、遂には我慢し切れなかったのか、「まさかこいつまで・・・」という人物までも参戦。
笑わせてもらいました。


いや、こってりたっぷりは良いのです。
全編くどいまでのケレンで埋め尽くしたウーの演出は、心意気が伝わるもの。
戦火の時代に男同士の熱い友情を熱く描く魂胆や宜し。
しかしドラマ部分がこってりたっぷり描いているにも関わらず、内容は薄いもの。
書割のように分かりやすい人物像は、明快であってもそれ以上の深みはありません。
謀略も含めて何もかも全て「情」で描く割には、その「情」の描き方が薄っぺらい。
曹操の内なる想いも表層的で、邪悪な低温の炎が描けていません。
演ずるチャン・フォンイーは秀作『さらば、わが愛 覇王別姫』でレスリー・チャンの相手役をやっていましたが、あちらも表層的な演技というか、役柄の読み込み不足というか、ゲイ嫌悪症気味なアプローチで、感心しなかったなぁ。


とまれ、この内容で2時間20分は長過ぎます。
終幕も延々続くので、「大合戦→赤壁の戦いへの盛り上がり」でビシリすっきり決めてもらいたかったところです。
あと30分は削れるのではないでしょうか。
しかもクライマクスは来年4月公開予定の『Part 2』なのですから、前置きだったらもっと短くても良いでしょう。


と、文句たらたらながらも、実際にはややがさつなCG特撮も含めて楽しめたのも本音です。
シリアスな歴史ものを期待していたら、実は荒唐無稽な英雄譚だった、という素顔も楽しめたし、やたら大袈裟な大合戦場面、特に色々な陣形や、クライマクスのホラー映画真っ青な「物陰に引きずり込んで敵兵を殺す」先方など、マジメが含み笑いを誘います。
また、役者は総じて好演していました。
孫権役のチャン・チェンは、私にとっては『グリーン・デスティニー』以来の再会なので、成長振りに目が行きました。
やはり中村獅童はどんな映画に出ても目をひん剥く演技なのも笑えました(普通に出演していましたが、一体ナニが「特別出演」だったのやら)。
来年4月の続篇にも、それなりに期待出来るのではないでしょうか。
やはり孔明は強風を呼ぶのか?
荒唐無稽振りを楽しめると良いのですが、この調子だと2部作としての完成度に今からやや不安に思えました。