days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

300, Fallout 3, Gears of War 2, 表現の自由 (Freedom of expression)...


「300」<スリー・ハンドレッド>のBlu-ray Discは、スペック的に劣るものが多いワーナー製品の中でもかなり良い品質の部類に入ります。
劇場で観たときもかなり楽しめましたが、ホームシアターでの野蛮な興奮の再現も楽しいもの。


全編特撮で占められ、セピア調に調整された人工的な映像と、彫刻のような肉体美の男たち(唯一裸体をさらす女性であるレナ・ヘディでさえ美しい身体です)。
飛び散る血しぶきと人体欠損描写でさえ、リアリティではなく様式美となっています。
高解像度のハイビジョン映像で、人工世界をとくと眺めましょう。


ワーナー初の、そして未だにワーナーの中でも珍しいリニアPCMサウンドは轟音巻き上げ、過剰にマッチョな内容を盛り上げます。
盗作問題も起きたタイラー・ベイツの音楽も、デヴィッド・ウェンハムのナレイションも、とにかくやたら扇情的です。


「過剰」というキーワードは、先日鑑賞したレッドクリフ Part I』と一緒にくくれましょう。
但しこちらはすっきりドライな面もあり、泣きの情緒を匂わせたあちらとは違う肌合いです。
過剰が無駄になっているあちらよりも、私はこちらの方を取ります。
それとこのやたら好戦的内容は、今見直すとブッシュ政権下の愛国心まるだしの空気の中で製作された時代の映画、とも取れます。


もっともスパルタ軍は白人ばかり、それに対してペルシア軍は奇形ばかりでグロテスクという描写を、中東軽視と取ることも可能ですが、この映画は単に「討ち死にの美学」に魅せられたフランク・ミラーの美意識の再現と解釈する方が正解な気がします。


特典はもりだくさんで、特に印象に残ったのがマッチョな身体を作る過程。
俳優達が散々しごかれる様子が収録されていて、いやいや、私だったら間違い無く即音を上げていたことでしょう。
実際、そうだった人もいたようですが、最後までやり遂げられたからこそ、皆見事な裸体になったのですねぇ。


極めて好戦的且つ極めて暴力的な内容の映画ですが、Blu-ray Discとしては高品質。
その点で持っていても損は無いと思います。


それにしても、とこのディスクを観てから、2つのゲームに想いを馳せました。


来月リリース予定の『Fallout 3』は、部位欠損などが修正されるとの噂ですが、現在のCEROの基準からするとまず間違いないでしょう*1 *2
ギアーズ・オブ・ウォー2』は日本国内での発売アナウンスさえ、未だ正式にありません。
どちらも海外では高評価の成人向けゲームですが、本作のような映画の暴力描写は無修正なのに、ゲームはいかんとはこれ如何に。


「大人向けゲーム」を「教育上良くない」といって非難するのは、そもそも筋違いでしょう。
例えば大人向けの娯楽だったら、一般家庭の多くに置いてあるであろう、お酒がありますよね。
「お酒を飲んじゃう子供」の話などは、よく会話の中で出て来て笑い話になるけれども、アルコールが子供に悪影響を与えるのは医学的に証明されているのだから、子供にお酒を与えるのは悪質です。
でもお酒は長年に渡って文化として認められているから、扱いが甘いのではないでしょうか。


対してゲームに関してはヒステリックな対応が目立ちます。
連続殺人事件が発生すると、容疑者は何々のゲームをやっていた、とマスコミを賑わせます。
こういうのを見ると、まだまだゲームは社会での扱い(安易な結論に飛びつきやすいマスコミのレヴェルは、社会のレヴェルを映し出していると思います)が低いのだなと実感します。
神奈川県の松沢知事の安直な「ゲームソフトの有害指定図書」も同様です。


私個人の考えでは、あらゆる表現の自由は認められるべき。
表現の自由とは思想の自由もであるのだから。
但し、それに触れたくない人の権利も認められるべきだし、悪意のこもった表現は糾弾されてしかるべきです。


ゲームに限らず、映画も小説も音楽もそう。
子供に不適切なものがあるものならば、子供に触れさせないよう努力を払うべきだし、また親もそのように努力を払わなければなりません。
しかし親が暴力ゲームを教育上良くないからと非難し、規制を求めるのは、自らの教育を放棄して他人に責任を転嫁しているだけのように感じます。
規制してもらった方が自分自身が楽ですからね。
子供がお酒に触れさせないようにしているのと、子供が暴力ゲームに触れさせないのと、親の払う努力という点で同じだと思うのですが。


結局、新しいメディアであるゲームは、まだまだ文化として認知度が低いということなのでしょう。
文化の認知度とは、社会の許容範囲や寛容度、成熟度に比例すると思います。
まだまだ日本は社会として幼稚なのでは、自主性に乏しいのでは。
統治され慣れていて、「お上」などと言って役人に都合の良いときに頼ってしまう国民性なのでは、と感じてしまうのでした。


300 〈スリーハンドレッド〉 [Blu-ray]

300 〈スリーハンドレッド〉 [Blu-ray]

Gears of War 2 (Standard Edition) (輸入版:アジア) - Xbox360

Gears of War 2 (Standard Edition) (輸入版:アジア) - Xbox360

*1:追記:XNEWSの記事「Fallout 3&New Xbox Experience 体験会が開催」に、修正して発売されると管理人さんが確認してくれています。

*2:追記:公式サイトにて「12月4日発売予定のXbox 360用ソフト「Fallout 3」日本語版と北米版(オリジナル)の表現および内容の違いについて」と正式に発表されました。迅速且つきちんとした説明は、大いに評価したいものです。