days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Every Little Step


夕食後、20時20分上映開始という、早めのレイトショーに出掛けました。
観客は十数人程度。
男女比だと女性7割といったところでしょうか。


映画は『ブロードウェイ♪ブロードウェイコーラスラインにかける夢』でした。
故マイケル・ベネット振り付け&演出、マーヴィン・ハムリッシュ作曲の名作ブロードウェイ・ミュージカル『コーラスライン』16年振りの再演に向け、出演者のオーディションを描いたドキュメンタリ映画。
出演者は無名の若者(とは呼べない人もいますが)ばかり。
オーディションで徐々にふるいに掛けられていく様を描き出しています。


そう、このドキュメンタリ映画は、『コーラスライン』の内容そのもの。
長年の夢を叶えるべく、力を出そうとし過ぎて力むもの。
全力は出すけれども、オーディションに落ちても人生は続く、と自信と冷静さを持ったもの。
様々な人々の姿を映し出しています。


無論、ベネットらの名作が如何にして作り出されていったか、という舞台裏も描かれており、現代と過去の名作ミュージカルのメイキングものとしても見られます。
それにミュージカルの舞台裏なのですから、歌やダンスもたくさん。
同じ登場人物でも役者の解釈の違いが如実に分かって面白い。


興味深かったのは、一次オーディションと二次の間は4ヶ月もあること。
つまりは出演者が決まるのは1年近く経ってから。
これは候補者に歌や踊りのレッスンを付けさせる為と思われますが、ブロードウェイとは贅沢かつ厳しいものなのですね。


出演候補者たちだけではなく、選ぶ舞台スタッフらの姿もキャメラは捉えます。
特に印象的だったのは、素晴らしい演技を目の当たりにしたときの彼らの表情。
明らかに凡庸な演技のときと違います。


実は私は『コーラスライン』映画版をテレビで観たことがあるだけなのですが、リチャード・アッテンボロー監督作品には、正直に言って余り感心しなかった覚えがあります。
まぁ、観たのが中学生か高校生のときでしたので、理由は覚えていないのですが。
それでもラストの『One』を並んで歌う場面だけは鮮烈に覚えています。


そう、この映画もラストは『ワン』です。
スタッフもキャストも、苦労が実った歓喜の瞬間でもあります。
それは観客にとってもそう。
候補者たちに声援を送った人ならば尚更です。
こうしてこの映画は、ミュージカルの舞台裏でありながら、ミュージカルの本質さえも捉えていることも観客にしらしめ、幕を閉じるのです。