days of cinema, music and food

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Che: Part Two


昨日に引き続き、第2部『チェ 39歳 別れの手紙』の鑑賞です。
日曜15時からのシネコンは、公開2日目で6割程度の入り。
観客層は年齢も性別もまんべんなく、といったところでしょうか。
先日の早大での試写会も好評だったようだし、やはりチェ・ゲバラは時代が求めている英雄なのでしょう。


第1部『チェ 28歳の革命』同様、映画は冷徹なタッチでゲバラを描きます。
英雄物語を期待して観に行くと肩透かしを食らうのが、この2部作。
しかも第1部を観て、ある意味「ふるいに掛けられた」観客が対象となると、このタッチも大方の観客は違和感無く受け入れられるかも知れません。


それでもストイックさは第1部以上。
ある種の戦争スペクタクル映画としても観られなくはなかった第1部に比べ、こちらは徹頭徹尾爽快感がありません。
大体にして、ボリビアで革命運動を起こそうとして失敗し、最後は処刑されるまでのゲバラ最後の1年を描いているのですから。
やることなすこと全て裏目に出て、徐々に追い詰められていく様を、スティーヴン・ソダーバーグは冷めたタッチで描写します。


第1部が戦記ものだとすると、こちらはゲバラの言動により一層肉薄した映画。
ですからあちらが画面比2.35:1のスコープサイズなのに対し、こちらは1.85:1と、横幅が狭い画角で撮られています。
主な舞台はジャングル。
うっそうとした自然の中で、幾たびもの命が失われて行きます。
それでもゲバラは強靭な意志で立ち向かおうとします。
圧制された民の解放を信じて。


幾つもの作戦失敗が重なり、遂には掃討されてしまうのですが、ゲバラ処刑の瞬間までも感動映画とはしません。
盛り上げず、淡々としています。
個人的にはゲバラ最期のときの諸説どれを取るのかという興味がありましたが、やはりあちらを採用したのですね。
ですがそれで正解でしょう。
それこそ、この2部作に相応しい。


映画は対象との距離を置かないことによって、かえって対象に肉薄しています。
観客に意図的な感情移入を許さずとも、観客に観察させることによって、対象に対してある種の共感をさせているように思えました。
これはゲバラという人物だからかも知れませんが、面白い発見です。


1部2部合わせて4時間半という長尺映画ですが、ある時代の中で高い目標と強い意志でもって懸命に生きたある男の像を描いた点で、これは評価出来ると思います。
ソダーバーグ、ベニチオ・デル・トロの両人にとっても、代表作の1つと呼んで良いでしょう。


ところで1シーンだけマット・デイモンが出ていましたね。
眼鏡姿でクロースアップも無く、台詞も確かスペイン語だったのですが。
ソダーバーグとの付き合いもあったからなのでしょうか。
映画でそれなりに重要な人物役を演じるフランカ・ポテンテとデイモンと言えば、ジェイソン・ボーン・シリーズですね。
今回は共演場面がありませんでしたが、すぐに思い出した映画ファンもいたことでしょう。