days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

My Bloody Valentine


土曜の夜に『ブラッディ・バレンタイン3D』を観て来ました。
いわゆる「ラブホラーアトラクション」(by配給会社)ですね。
「ラブホラーアトラクション」。
何て素敵な響き、ネーミングでしょうか。
舞台がバンレンタイン・デーだとか、公開日が2月14日だからとかあるのでしょうが、こういったゲテモノ映画は時々配給会社が何かやらかしてくれるのが可笑しいです。


レイトショウは全部で数人の入りとは寂しい限り。
客はカップル1組、男性連れ1組、男性1人、女性1人といったところでした。
ワーナーマイカルは3D上映に力を入れていますが、さすがに必ずしも全作品で興行的に好調ではないのでしょう。


今回、私が観に行った最大の理由は、その3D上映にあります。
近年の3D上映は目への負担も少ないし、立体効果も凄い。
赤青メガネ方式で自宅での立体上映が出来るソフトもありますが、偏光式は自宅では出来ませんからね。


立体上映方式のスラッシャー/スプラッター映画というと、『13日の金曜日Part 3』がありましたが、立体効果が良く出来ていると評判の映画でした。
しかし私はテレビでしか観ていません。
当然ながら立体効果が無い版でしたが、室内テレビアンテナをこちらに向けたりと、やたらと立体効果を狙った構図が可笑しかったです。
丁度『Part3』と同時期に『ジョーズ3D』というのもありましたが、こちらは立体効果はあんまりだったようです。
テレビで観たこれも、映画自体が詰まらなく、何でマイケル・ケインはこんなのに出ているのだろう、と思ったものでした。


さて本作品のオリジナルは『血のバレンタイン』。
20年ちょっと前に、土曜夜の『ゴールデン洋画劇場』で放送されていた記憶がありますが、丁度友人らが泊まりに来ていたので、見逃していたのでした。
よってオリジナル版との比較は出来ませんが、これはこれで中々楽しめたのです。


物語は炭鉱町にてヘルメット、ゴーグル&ガスマスク、凶器にツルハシという謎の男が、住人を血祭りに上げて行くというもの。
10年前の陰惨な事件に端を発した事件の行方がメインとなっていて、話しはそれなりに工夫がされていて、犯人探しのプロットを持っています。
ですがミステリとしては明らかにアンフェアだし、真犯人の正体も「そう言えば伏線があったな!」というものではなく、飽くまでもショッキングな効果を狙ったもの。
それでも終盤は中々話も盛り上がるし、結構楽しめました。
この手の映画に珍しく、殺されるのはキャピキャピ(死語?)しているティーンエイジャーではありません。
ですからヒロインも子持ち主婦。
ジェイミー・キングって、田舎の主婦が似合うとはちょっとした驚きでした。


肝心の立体効果ですが、冒頭の配給会社ライオンズゲートのロゴからして立体です。
続く過去の新聞記事まで文字や写真が立体。
ここいら辺はスタイリッシュで格好良く、最近の映画といった按配です。
しかし字幕ではなく吹替え版ですので、そういった新聞記事の文字や、何気に映る看板などの文字がまるっきり訳されていないのは、観客にとって情報の欠落となり得るもの。
直接物語には関係無いものばかりでしたが、これは致し方無いのでしょうね。


撮影はフルHD撮影ということもあって、画質は非常にクリアで見通しが良い。
逆に夜の森や炭鉱内、屋内の場面などでは明るく感じて、これが若干恐怖感を落としているようにも思えました。
当然ながら映像は立体効果を狙ったものが多いのですが、物体がフレームに掛かってしまう(フレームに掛かると立体効果が余り無い)場合も多かったのが勿体無い。
しかし画面に向かって飛び出すツルハシや目玉など、笑わせてもらいました。


不満は本編が数分カットされていること。
前半にある3人まとめて殺される場面がまるごと無く、殺害後の場面に飛んでしまいます。
映倫の横槍だとか色々とネットでも言われていますが、真相は分かりません。
可能性としては、以下の理由で成人指定になりそうだったからなのでは、と思いますがさて。

  • 小人が惨たらしく殺害される
  • 全裸女性の正面場面がある


ボカシって立体映画の場合はどうなるのでしょうか。
そういった技術的な問題でカットされたとも考えられます。
女優にメイクした全裸死体は無修正でしたが、あれは良いのか…と、全く訳が分かりませんでしたが。


さて、立体映画は細切れのショット繋ぎに向いていないというのもあるので、こういったスリルや恐怖を盛り上げるべき映画では、諸刃の剣かも知れませんね。
構図で先端恐怖感を煽れても、編集ではタイミングやリズムに細心の注意を払わないと、間延びしてしまう場合もありそう。
それに長時間だと観客が疲れてしまうという欠点もあります。


それにしても、ワーナーマイカルの場合は、入場料金が一切の割引が効かない、2,000円均一というのはちょっと高い。
設備投資費用もあるのは分かりますが、これでは気軽に立体映画を観ようぜ、という気にはなれないかも知れません。
自分の首を絞めて、「立体映画は儲からない」などとならなければ良いのですが。


それでもやはり、立体映画は劇場で観るに相応しい見世物です。
特に今回思ったのは、立体映画とこういった扇情的映画は組み合わせとして相応しいということ。
スプラッター映画はエログロの見世物的要素が強いのですから、見世物要素の強い立体映画とは相性が良いのも当然でしょう。


長尺映画ばかり撮っているジェームズ・キャメロンの新作が、フルCGのSF立体映画ですので、こちらも楽しみです。