days of cinema, music and food

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Valkyrie


トム・クルーズの新作『ワルキューレ』を観て来ました。
公開3日目の日曜15時半からの回、シネコンでも小さめの小屋はチケット完売。
昼の回も完売だったようなので、トム君人気は衰えずといったところでしょうか。


第二次大戦下におけるヒトラー暗殺未遂事件は数多くあった訳なのですが、これはその中でも最後にして最大の計画を扱ったもの。
概略は知っていたものの、映像化されると思っていたよりも大掛かりな話しだったのがちょっと驚きでした。
これは単なる暗殺計画ではなく、軍事クーデーターですね。
総統総本山「狼の巣」とか、予備隊を使ってのベルリン市内での場面など、ハリウッド大作映画ならではの映像です。
ちょっとこのスケール感は収穫です。


ジャッカルの日』同様に計画は失敗すると分かっていながら、相当にハラハラドキドキさせられ、スリラーとしては中々のもの。
ここら辺、『X-MEN』や『スーパーマン リターンズ』の人ではなく、『ユージュアル・サスペクツ』のブライアン・シンガーらしい硬派演出。
ドラマ性を廃してスリラーであろうとする姿勢は潔いものと思いました。


ただ、鑑賞後に満足感が少ないのは、ドラマ性が余りに希薄に感じられる為です。
いやいや、脇役陣は皆素晴らしいのです。
ケネス・ブラナービル・ナイテレンス・スタンプトム・ウィルキンソントーマス・クレッチマンらは、それぞれ人間味を感じさせてくれました。
それに『ブラックブック』が素晴らしかったカリス・ファン・ハウテン
彼女の出番は時間にして数分だと思いますが、それでも光っています。
大女優になるのでは、と期待を抱かせますね。
ヴァーホーヴェンは女優を発掘するのが上手いなぁ。


問題はトム・クルーズ
彼主演の映画らしく、俺様トム様映画になっていて、とにかくカッコ良く撮られています。
しかし薄い。
演技の掘り下げ方なのでしょうか。
人物造形が浅いのです。
周りが老練かつ素晴らしい役者を揃えただけに、その薄さ・浅さが目立ちます。
主人公の葛藤が描けていれば、さらに良い映画になっただろうに。


私の中では、「トム・クルーズ燃え燃え度」というのが何となくあって、これは3.5かな。
因みに一番燃え燃え度が高い「5」は、『ア・フュー・グッドメン』と『ザ・エージェント』。
前者は映画を台無しにし掛けていましたが、後者はギャグとして逆手に取っていたのがさすがキャメロン・クロウ


シンガー組のジョン・オットマンって、メロディラインが余り印象に残らない地味な映画音楽作曲家だと思っていましたが、これも同様。
しかしサスペンスを盛り上げる手腕は素晴らしい。
作曲家と編集者という、珍しい二束のわらじを履いている人ですが、この映画はこの人の貢献度も高いのではないかと思いました。


ところで第二次大戦好き、かつドイツかぶれの父の洗脳に合って、色々と教え込まれていた私にとって、極めてとっつき易い映画だったのです。
歴史的な興味も沸く映画でした。