days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Watchmen


土曜の夜、『ウォッチメン』を観に行きました。
99席と小さいシネコンの小屋は6割の入り。
R-15なので子供はいません。
ま、2時間半以上も長尺なので、20時半過ぎ開始の上映は、終了時刻が23時半でしたからね。
それもまた当然でしょう。


アラン・ムーア&デイヴ・ギボンズの原作は買ってあるのですが、勿体無いので1/4くらいで止めています。
随分と前から読みたかった本ですが、映画版の驚きも捨てたくない。
なので途中でやめています。
原作に忠実な映画版との触れ込みでしたが、細かいところは結構違いました。
冒頭のボブ・ディランの『時代は変わる』が流れるタイトルバックは、完全に映画のオリジナル。
ここがかなりカッコ良くて秀逸。
全体に様式化されている映画なのは、監督がザック・スナイダーだから当然でしょう。
彼が監督ということで、『ドーン・オブ・ザ・デッド』『「300」』同様に、原作以上にセックス&ヴァイオレンスたっぷり。
残虐度も出血度もエロ度もかなりのものでした。
これも映画向けの改変ですね。


原作との比較はともかくとして、個人的には気に入った映画でした。
ヴィジュアルとサウンドは刺激的で、Blu-ray Discで欲しいと思いましたとも。
押さえた色彩と粒状性のある映像がどのようにBDで再現されるのか。
これは楽しみです。


しかし冷静に映画としての評価となると、これはちょっと微妙です。


ヒーローの1人が殺害される冒頭から物語は始まるのですが、かつてのヒーローたちの回想場面になり、原作では面白かったものの、映画としては物語の進行が無いので冗長に感じられます。
物語自体は結構回り道したり不必要に複雑だったりして、整理されていない印象です。


各ヒーローはキャプテン・アメリカバットマンのパロディになっているくらいしか分かりませんでしたが、何だか妙にリアルな存在。
自己矛盾や人間味を感じさせるのに、ドラマは薄味。
もっと各人のドラマが掘り下げられていれば、クライマクスの決断も凄みを増しただろうに。
さらに1985年当時の話そのままで、現代の視点は入っていない。
よって内容的にはかなり古臭く感じられます。
現実やヒーローものを脱構築した原作があるのであれば、その原作をさらに脱構築して映画版を作れば良かったのではないか、と思いました。
核戦争の恐怖の盛り上がりもあまり無く、ザック・スナイダーは複雑な物語を語る術を持ち合わせていないのが分かってしまいます。
前2作は物語が単純だったから、彼の視覚感覚が前面に押し出されていて、それが成功していたということなのでしょう。


ヒーローの中では、ジャッキー・アール・ヘイリーが好演していたロールシャッハが好きですね。
歪んでいるにも関わらず、純粋さも持ち合わせている。
極端な性格は『タクシードライバー』の主人公トラヴィスや、『セブン』のジョン・ドウを思い出させました。
この矛盾が面白いし、感情移入も出来ます。
次回作は『エルム街の悪夢』リメイク版のフレディ・クルーガー役ですか。
似合っていそうです。
2年前に観たリトル・チルドレン』以来の再会ですが、そう言えば同作で共演していたパトリック・ウィルソンとも再共演ですね。


映像で強烈に印象に残るのは、全身青白く光る全裸のDr.マンハッタンでしょう。
ビリー・クラダップが声を演じている彼は、伸縮自在で現在・過去・未来を見渡せ、テレポーテーションをして火星にも行けるという存在。
言わば神のようなものなのですが、これが殆どすっぽんぽん。
ボカシが入ったらイヤだなぁと思ったら、無修正で安心。
しかしどうにも立派な股間に目が行ってしまい、これはこれでちょっと困りました。


アンディ・ウォーホールデヴィッド・ボウイ、保守派論客パット・ブキャナンやリー・アイアコッカなどのそっくりさんも出て来てちょっと可笑しい。
ニクソンも出て来るので、前日に引き続き2日連続でニクソン映画を観たことになりました(笑)。
映画の中でも東海岸のエリート嫌いなのが分かる台詞が面白かったです。