days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Doubt


近所のシネコンにやって来たので、『ダウト〜あるカトリック学校で〜』を観て来ました。
土曜19時10分からの回は、私も含めて5人の入り。
最近は都心に比べて少々遅れても、シネコンで単館系の映画も上映されることが多くなって来ました。
お陰で都心に出かける率が著しく下がっていますが、有難いことでもあります。


さてこの映画、1964年のアメリカ、邦題通りとあるカトリック学校を舞台にしています。
厳格な校長であるシスター、メリル・ストリープに支配されている学校で、先生である若いシスター、エイミー・アダムスが校長に言ったことが物語の発端になります。
先進的で多くの信者や生徒達に慕われている神父フィリップ・シーモア・ホフマンが、黒人生徒のロッカーに生徒の下着を入れたのを見た、と。
校長は神父が黒人生徒に小児性愛を行ったのだと確信します。
だがどこにも証拠はありません。
疑惑を否定する神父。
校長と神父の闘いが始まります。


校長は自らを正義の使徒だと確信し、また神父を断罪するつもりでいます。
しかし真実はどうだったのか。
ミステリアスでスリリングな展開で引っ張ります。


評判となった原作舞台劇を書き、映画用に脚色し、監督も務めたのは、ジョン・パトリック・シャンリー。
非常に面白い作品だし、監督としてもかなり力が入っています。
原作が舞台劇なのに、舞台劇臭が非常に薄く、映画を観ている実感が沸きます。
緩やかな序盤で教会内の日常生活や人物関係、性格描写を丁寧に描き、物語が動き出してからは止まることを知りません。
これ、物語も良く出来ていますが、映画としてもかなり良く出来ています。


劇中で言及される「不寛容」だけではなく、「正義」も映画のテーマでしょう。
己を正しいと確信している者がいるとしても、果たしてそうなのか。
普遍的なテーマが観ている間に興味をそそります。


キャスティング自体が見ものなのは言うまでも無いでしょう。
白塗りにメガネ、常に硬い表情のストリープは、恐ろしくも多面的な人物を演じていてかなりのインパクト。
やや大仰に思える場面もありましたが、非常に印象的な人物像を作り上げています。


彼女に対するフィリップ・シーモア・ホフマンは、その外観からして役にぴったり。
太めで表情豊か、いかにも開放的で人生を謳歌しているよう。
誰もが好感を抱くであろう人物。
しかしホフマンです。
ひょっとして裏の顔があるかも、小児愛の持ち主かも知れない、と観客に疑惑を持たれることを計算したキャスティングでしょう。


この大ヴェテランと曲者の間で揺れ動くのがエイミー・アダムス
彼女も適役です。
シリアスな彼女を観るのはほぼ初めてでしたが、予想範囲内の演技とは言え、かなり頑張っていたと思います。
彼女も適役。


出番は少なくとも場をさらってしまうのが、黒人少年の母親役ヴィオラ・デイヴィス
いやはや、凄い女優も居たものです。
衝撃的な台詞内容のお陰、つまりは設け役とは言え、画面を観ている私の目を釘付けにしました。
今までも私が観た映画、『アウト・オブ・サイト』、『ソラリス』、『ディスタービア』といった面白い映画にも端役で出ていたようなのですが、まるで記憶にありませんでした。
ちょっと注目の女優ですね。



その衝撃的内容の台詞もそうなのですが、終盤の展開も含め、至る所に観客の疑惑を喚起する展開となっています。
色々な可能性がありそうだし、想像力も膨らみます。
ラストでストリープが明かす種明かしも、本当に彼女の言うような真実だったのか。
そしてその後の幕切れ。
ストリープが嗚咽を漏らして言う台詞の衝撃。


最後の最後まで題名通りに疑惑が尽きない、これは謎めいた映画なのです。
ハワード・ショアの音楽、名匠ロジャー・ディーキンスの撮影も一級品でした。


ダウト ~あるカトリック学校で~ [Blu-ray]

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ダウト―疑いをめぐる寓話

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