days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

パイオニアBDP-LX91の究極使いこなし体験会@アークス


凄いものを見てしまいました。


アークスからDMが来たのは数日前。
掲題のイベントが土日に開催されるというので、いそいそと土曜日30日に吉祥寺まで出掛けました。
車で1時間強。
K一家との食事の約束にも少々遅れてしまいましたが、楽しいひと時。
食事後、夫君のオーディオ好き・音楽好きのHさんとアークスに向かいます。


Hさんご存知の場所だというのに、アークスにはまるで気付かなかったとか。
それはそうかも。
こんな風に半地下ですからね。
開催開始時刻14時ぴったりに到着し、催しの始まりです。


イオニアBlu-ray Disc再生専用プレイヤーBDP-LX91は、1月のアークス訪問時に初めて見ました。
出力される画に感銘を受けたのは当然として、兎に角驚いたのはその音質。
切れ味鋭く、立体感があり、力感がある。
無論、プレイヤーだけではなくシステムも含めて凄かったのですが、相当に感銘を受けました。
これはプレイヤーの責任ではないのですが、反対に液晶プロジェクターの遠近感や動き、1チップタイプのDLPプロジェクターのカラーブレイキング・ノイズには、ちょっと残念に感じたものです。


本日はアークス白須さんの言う、「安定した高性能ではなく、神経質な超高性能。使い方・設定を誤ると宝の持ち腐れになる可能性大」なLX91の出力する画を、3チップタイプのDLPプロジェクターで見るとどうなるか、というもの。
プロジェクターはクリスティという初めて聞く会社のもの。
どうやら業務用プロジェクターの会社のようです。
また、同じくパイオニアのAVアンプSC-LX90の音もアークスのシステムで聴けるということで、楽しみにしていました。
この回の観客は、我々を含めて全部で7名。
イオニアのエンジニアの方もが2-3名、DLPプロジェクターを作ったクリスティの方1名もいらしていました。


では改めて、使用機材一覧は次の通りです。


プロジェクターは席の後ろにでーんと設置されていました。
床から本体上部まで、恐らく2mくらいあったのでは。
筐体の大きさがW500×D561×H259mm(レンズ除く)だから、かなり巨大です。
トップ写真の通り、左右は吸音材?のようなもので挟まれていました。
かなりの迫力です。


会場の様子はアークスのこちらのページをご覧になられると、良いでしょう。
スクリーンは150インチ弱です。
使用されたスピーカは写真の真っ赤な大型のもの。
スクリーン上部にあるものは使われていなかった模様です。
今日は上部サランネットが取り外されており、ユニットはエレクトロボイス使用だと確認しました。
スーパーツイターとウーファーのメーカーは不明です。
私が座った席は前述のアークスHP写真にある、1番右のソファ後ろに設置された椅子でした。


まずはご挨拶代わりとばかりに、Blu-ray Discで『トップガン』冒頭から、あちこちの場面を少しずつ。

トップガン スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

トップガン スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

実はこの映画、観たことが無いのです。
なので新鮮な気持ちで見られました。
部屋の灯りが落とされます。
プレイヤーは1080/24pでの出力設定でした。


まず冒頭。
フィルムの粒状が良く出ていて時代を感じさせますが、その粒状もよく出ています。
ハロルド・フォルターメイヤーのシンセ音楽もやはり時代を感じさせますが、音質自体はかなり良い。
高解像度、ハイスピードです。
きらきら音だけでなく、ベース音もちゃんと抜けています。
そして空母からの戦闘機離陸。
ノズルからの噴射と共に超低音が再生され、着ていたシャツが振動しました。
一瞬、実際に熱気が来たかと思ったくらい。
いや、本当にそう勘違いしました。
こりゃぁ凄い。


クラブの場面。
女性たちのメイクが時代を感じさせますが、そのメイクもはっきり分かります。
化粧の具合そのものが分かるのです。


上官(役者名は忘れしましたが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の校長役だった人)にアンソニー・エドワーズトム・クルーズが呼びつけられる場面。
3人の顔に浮かぶ汗。
着ている服の布地。
部屋に置かれている小物類。
どれも立体感、いや実在感があります。


ケリー・マクギリス初登場場面。
足許を後ろから追うショットでの、ストッキングの質感。
顔が映ったときの輝くばかりのブロンド・ヘア。
こりゃ、一目惚れするかもな。
少なくとも、隣席の盟友に耳打ちしたくなるのも分かるというもの。


場内が明るくなると、いやいや、一昔前の映画だというのに、こんなに情報があったとはと思いました。
このディスク自体初めて観ましたが、これは十分な品質どころか、立派な高画質ディスクです。
元はスーパー35、つまり画面比1.35:1のスタンダード・フィルムで撮影し、上映時に上下をぶった切った映画の走り。
70mm上映のときはブローアップの影響で随分と粗い画だったそうですが、これは家庭劇場で観るには十分です。
フィルムに記録されている情報が余すところなく再現されているのではないか、と思いました。


画面の明るさ。
プロジェクターの10,000ルーメンは伊達じゃない。
かなり明るいのですが、白々しさは微塵も無く、暗部階調もしっかり出ています。
コントラストもグラデーションも自然で、立体感満点。
フィルムの質感を伝えています。
液晶タイプに見られるような変な動きも全く無く、DLP1チップタイプにあるカラーブレイキング・ノイズも当然ながら無く、しかもかなり余裕のある画でした。
それが余裕のある再生システムのお陰で音も余裕があり、並の映画館以上の画質と音質です。
いやぁ、これは参りました。


ファンノイズはかなりしますが、三管に慣れている私は余り気にならないレヴェル。
白須さんが言うには45dbくらいあるのでは、とのことでした。
もし自宅にあったら、ちょっとうるさく感じられるかも。
白須さん曰く、「音はどうにでも出来ます」というのは、埋め込みも考慮してのことでしょう。



次にHDMIケーブルの繋ぎ代えによる音質差デモです。
1mで80,000円のものと、その半額のものとで聴き比べ。
ソフトは『レッドクリフ Part I』。

アンプ側はHDMIのコネクタ1番と2番の音が宜しくないということで、6番に接続しています。
再生されたのは、諸葛孔明が周愈と初めて会う場面。
少年が笛を吹き、その音色を聞いた周愈が笛を調整してあげるところまで。


まずは高い方のケーブル。
孔明が仰ぐ扇の音がふくよかな感じがします。
少年の笛の音色は…あれ、劇場で観たときよりも聴き易いなぁ。
飛び立つ鳥の音も立体感があります。
次の半額(と言っても相当に高いけど)のケーブル。
扇の音は少々痩せている感じ。
笛の音色は周愈の調整前は耳障り、調整後とはっきり違います。
鳥の数はちょっと減ってしまいました。


高い方のケーブルは、銅線に銀でコーティングしているのだとか。
情報量は明らかに多いのに、笛の音色が余り下手でなくなっています。
音楽ものを聴くときには、後者のケーブルの方が良いとか。
要は味付けしてしまっているのだということです。
HDMIはデジタルだから、安かろうが高かろうが、どれも同じ情報伝達の筈だと言われていたのに、実際には差異がありますよ、一昔前の趣味のオーディオの世界に近いのですよ、というデモでした。


尚、6番コネクタの方が1番2番よりも良い件ですが、最後の質疑応答時間に理由を質問したところ、分からないとのこと。
イオニアの方(多分、幹部社員クラスの方)曰く、このアンプは日本全国周っていて、酷使している。
1番2番はその影響もあるのでは、ということでした。
白須さんが言うには、このアンプに限らず、HDMIであっても、端子によって画質音質が変わる。
なので自分の機器は色々と繋ぎ変えて試してもらいたい、とのことでした。


次はDVD-VIDEO再生の映像です。
ディスクはかつての定番、『ヒマラヤ杉に降る雪』です。

AV雑誌では冒頭の場面が良く取り上げられていましたが、私はこれが初見です。
濃霧の映像は確かに再生が厳しそう。
しかし霧の中から徐々に姿を現す人影、船室側から見た窓ガラスの汚れ等、どれもしっかり表現出来ていました。
BDに比べると解像度が低いのは確かですが、これはこれでちゃんと見られます。
というか、情報はしっかり出ていたし、ノイズ感も少なく、立体感や暗部階調も出ている。
ネットではLX91のDVD-VIDEO映像はPLAYSTATION 3に負けるなどと書かれているのも見掛けますが、本当なのかなぁ、と思った次第。
妙な強調感も無く、素直で大変好ましい映像のように見えました。
この「素直」って、結構ヴィデオ映像にとってはハードルが高いと思うのですが。


以降はパイオニアの方によるデモでした。


定番の『ダークナイト』。

ダークナイト [Blu-ray]

ダークナイト [Blu-ray]

Blu-ray Discは北米盤でした。
機器調整用には字幕は不要どころか、字幕の白が他の部分に影響を与えますからね。
だから字幕無し盤なのでは?と勝手に想像しました。
場面はバットモービル大破直後のバットポッド登場からジョーカーのトレーラー転倒まで。
いやぁ、これは凄かった。
アイマックス撮影でただでさえ高画質だというのに、色・質感・輪郭など、文句無しです。
1080iと1080pをリモコンで切り替えてのデモでしたが、どちらもすこぶる優秀とは言え、1080pの方が眼前で死闘が繰り広げられているかのよう。
映画館で観たときよりも高画質ですよ、これは。
警察護送車両の紺色の質感、色味。
金属で作られた車という実在感があります。
バットモービルからバットポッドへの変身場面では超低音が再生されていて、「こんな凄い音が入っていたのか」と驚き。
またもやシャツがびりびり振動していました。


他のデモ映像は次の通りでした。

  • グラディエーター』のWOWOWハイビジョン録画:マキシマスと歴戦の剣闘士の戦闘場面。虎が出て来る場面ですね。1080iと1080pのリモコン切り替えで立体感を確認。実際に再生中に切り替えて見比べてもらいたかったので、リモコンボタンに実装したとのこと。剣闘士の鎧兜の立体感と質感がかなり良い。1080iで放送されたものと1080pに変換したら、さらに高画質とは。久々にこの映画を見ましたが、『プライベート・ライアン』の影響で、戦闘場面はストロボ効果のような映像になっていますよね。リドリー・スコットたるヴェテランにとっても、同作の衝撃は大きかったんだなぁ、とちょっと思い出したり。
  • THXデモディスク?(DVD-VIDEO):『スター・ウォーズ/エピソード3 シスの復讐』から、小型ロボットに襲われるオビ=ワン機をアナキン機が救うくだり。CG多用で合成だらけ、でも大型艦の細かいディテールが感じられます。これも十分、見られるなぁ。

ウォーリー [Blu-ray]

ウォーリー [Blu-ray]

ウォーリーがイヴを追ってロケットに飛び付き、大気圏外に飛び出す場面。
実写と見まごうフルCGI映像。
しかもCGIなのに強調感が極めて少なく、解像度も相当に良い。
DLPプロジェクターとの相性も良いのではないでしょうか。


Celine Dion Live in Las Vegas A New Day [Blu-ray] [Import]

Celine Dion Live in Las Vegas A New Day [Blu-ray] [Import]

タイタニック』より『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』。
HDヴィデオ撮影映像です。
やや引いた画でも、セリーヌの首筋に横皺が見えたりですが、観客席の客がはっきり見えますね。
衣装の質感も見事。


と、すっかりこの日のシステムに圧倒されたのでした。


最後に質疑応答がありましたが、HDMI端子の件だけではなく、私も幾つか質問してみました。
まずは気になるプロジェクターの値段。
白須さん「800万円です。6Kのはその半額です」。
ははは、やはり高いですか。


SC-LX90の設置について。
Horka「上部60cm以上の空間が推奨されていますが、今日はラックにきっちり入っています。(熱暴走などは)大丈夫なのでしょうか。」

イオニア幹部社員と思しき方「ここはラックの後ろに空間がありますので、大丈夫です。」
必ずしも上部空間でなくても良いのですね。


他の出席者の方A:「字幕の明るさが気になるんですが、字幕の白だけ黄色とか色を付ける機能は無いんですか。」
イオニア:「残念ながらございません。将来は検討させて下さい。」


他の出席者の方B:「LX91の後継機は出ないんですか。」
イオニア:「研究中です。」


最後の回答は何とも微妙でしたが、先に発表されたパイオニアの厳しい業績からすると、もうフラッグシップ機は中々出ないのではないか、という悲観的予想も出来ますね。
しかし開発者の方が、「これはかなり優秀な機種だと胸を張れると思います。」とおっしゃっていた通りの機種です。
イオニアはLDの時代から好きですので、個人的には売れてもらいたいところ。
しかしプラズマディスプレイのKUROも、生産終了のニュースが流れると売れ出すというのも、パイオニアにとっては皮肉なものです。
何とか業績が上向いてくれると良いのですが、この不景気な世の中では嗜好品たるAVでは苦しいでしょうね。


最後に白須さんから。
「LX91は本当に奥の深い機種です。古くからのオーディオ・マニア、AVマニアの方々にも非常にいじりがいのある、素晴らしい機種だと思います。(下位機のBDP-)LX71なんて買ってはいけません。全然違います。LX71を買うくらいならば、頑張ってLX91を買って下さい。」
あのう私、実はLX71買おうかと思っていたのですが…
そうですか…
お金貯めますか…


1時間半のイベント終了後、白須さんに声を掛けられました。
白須さん「どうですHorkaさん」
Horka「いやぁ、DLPプロジェクターで欲しくなったのは初めてですよ」
後ろでクリスティの方が「ありがとうございます」と言っていたのが聞こえました。
Horka「でも高いですねぇ」
白須さん「その内に3チップのでも安いの出ますよ」
最後の発言はかなり希望を持たせてくれますね。
本当、出てくれると良いです。


次の回の観客たちも入店しだしたので、そそくさと退出。
ウルトラ・ハイエンドAVの世界は、高嶺の花とは言え、目と耳の保養には十分なっただけではなく、かなり貴重な体験でもありました。
白須さん、各メーカの方々、ありがとうございました。


それにしてもこの体験は衝撃度大です。
一旦帰宅後、ジムで走っている間も、画と音を思い出してしまいました。