days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"Miami Vice" on Blu-ray Disc


我ながら好きだねェ、と思ってしまう映画はありませんか?
そんなに傑作でもないのに、何故か惹かれてしまう映画。
「ちょっと気になるね、あの娘」といった程度の映画。
どうやら私にとっては、『マイアミ・バイス』がそれに当たるようです。


この映画、タイのバンコクで観(そのときの模様はこちら)、バンコクでサントラCDを買い(そのときの変わったトラブル?はこちら)、さらには日本でも観ています(そのときの模様はこちら)。
レヴューでも大層持ち上げたのですから(それはこちら)、我ながら少々呆れてしまいます。
こうなると「ちょっと気になる娘」どころではなく、「何故か気になる娘」ですな。


当然ながら昨年末にUKで出たBlu-ray Discも購入済み。
内容は先ごろ出た国内盤と同様のようです。
北米盤にあったディレクターズ・カットも、マイケル・マンの音声解説も無いのが残念。
この映画がもの凄い高額製作費になったのは、モーターボート・レースの場面も一因だとか。
予告編にはあったのに、劇場版では丸ごと削除されています。
ディレクターズ・カットにはそれが入っているので、どんなものか見てみたいものです。


その場面、数分のメイキング映像は本ディスクにも収録されています。
恐らく事件とは関係無い、主人公2人のカッコ良さのみを描くことに費やされたのではないかと想像しますが、さてどんなものだったのでしょうか。
映画用にわざわざボートまで製作したというのに、勿体無いことこの上ありませんね。


見直すと、主演のコリン・ファレルよりも、中盤から出番が減るジェイミー・フォックスに目が行きます。
彼が登場すると緊張感があって、ついつい視線が行ってしまうのです。
フォックスと公私に渡るパートナーを演じるナオミ・ハリスは、描き込み不足なのは女を描けないマンだから勿体無いか。
女を描けないと言えば、ファレルとコン・リーとのセックス・シーンで、コン・リーが涙を流したりで何だかなぁと白けてしまいますね。
マンは下手に女を描こうとせず、ストイックに男だけの世界を描いた方がしっくりしますね。
コン・リー自身は好演していると思うのですが。
そう言えば、私の中で何故か気になる俳優であるキアラン・ハインズも、途中からはまるで出て来なくなります。
情報漏れルートの解明はどうなったんだろうか。


さて画質・音質ですが、これが問題作。
撮影はハイビジョン。
マンは前作『コラテラル』で、「夜景を思い通りに収めたい」との理由で一部HD撮影にしましたが、本作は全編HD撮影なのです。
これが非常にノイジー
同じHD撮影でも『ゾディアック』とか『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などといった(どちらもデヴィッド・フィンチャー作品ですが)、滑らかでつるっとした感じとは程遠い。
ザラつき、ノイズがたっぷり乗った画。
劇場で観たときも随分と荒れた映像だなと思いましたが、その点では忠実に収められているディスクではあります。
よっていわゆる高画質を望みたい人にはまるでお薦め出来ません。
これはそういう画の映画なのです。
マンの意図がどの辺にあったのか分かりませんが、汚い映像によって奇妙な迫力が増したのは確かでしょう。


一方、音はかなり迫力があります。
音質自体も良いので、ついつい音量を上げてしまいました。
序盤にある、機関砲による銃撃場面(マン作品に珍しく、腕が吹っ飛んだりの残酷映像には少々びっくりしました)、主人公たちによる麻薬倉庫襲撃場面、それに1番ハラハラするトレーラーハウスでの人質奪還場面など、迫力満点。
クライマクスの大銃撃戦も含めて、銃声がズシンと重くて腹に響きます。
音響にもこだわるマイケル・マンらしいですね。
こうなると、やはりマンの代表作『ヒート』のBD化が待ち遠しい。
その内に出るでしょうけれども。


好きな映画ですが、特典など少々寂しい。
これは国内盤よりも安価なUK盤での購入をお薦めします。


エンド・クレジットを飾るのは、TV版同様にフィル・コリンズが歌う懐かしの名曲『夜の囁き』…ではなく、ノンポイントによるカヴァー版。

ハードなカヴァーなのに、原曲の雰囲気を余り壊していないのが意外でした。


さてすっかりHD撮影に味をしめたマンの新作『Public Enemies』も、当然ながらフルHD撮影となっています。

ジョン・デリンジャージョニー・デップが演じ、FBI捜査官メルヴィン・パーヴィスをクリスチャン・ベイルが、マリオン・コティヤールが共演という期待作です。
が、デップとデリンジャーは顔が相当似ていない気がします。
未見ですが、ジョン・ミリアスの『デリンジャー』での私の大好きだったウォーレン・オーツの方が相当似ていると思うのですが、そこはまぁ、デップがどう演じるのか見ものなのでしょうね。
で、予告をご覧の通り、映像がモロHD映像。
禁酒法時代に合うのかどうか、ちょっと不安ではあります。