days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Star Trek


ようやく『スター・トレック』に行って来ました。
土曜18時過ぎの回、シネコンでも小ぶりな劇場は8割くらいの入り。
上映終了間近だからか、近所のシネコンではどこも1日に1-2回の上映のみとなっています。
だから客が集中しているのかな。
一律1,000円の日だったから、というのもありましょうが。


さて映画はTVシリーズ宇宙大作戦』の再構築兼前日談という、かなり面白い構造となっています。
実はタイムトラベルものなのが、SFならではの妙味。
カーク、スポック、ドク・マッコイ、ウフーラ、スコッティ、スールーと、御馴染みの登場人物でありながら、微妙に設定を変えていて、少々驚きのある人もありました。
特にザカリー・クイントが演じるスポックと、カール・アーバンが演じるドク・マッコイは、オリジナル版を知っていると余計に楽しい。
時々、本当にそっくりに思える瞬間がありました。
サイモン・ペッグは好きな役者ですが、ちょっとオリジナル版のスコッティとは違うかも。
チェコフ演じるのはアントン・イェルチン
先日観たターミネーター4』に続いてSF大作に登場です。
彼のインチキ・ロシア訛りは国辱モノにならないのかな、などと余計な気掛かり。
だがまぁ、それらはそれらで良しとしましょう。


ブルース・グリーンウッドエリック・バナら中堅、ヴェテラン俳優も脇を固めます。
だが何より嬉しいのは、レナード・ニモイが登場するところ。
新旧スポックの共演はファンへのサーヴィスですね。


映画は迫力満点な冒頭で掴みはOK、その後もテンポ良く快調に物語を進めます。
2時間余、飽きることはありませんでした。


が、監督はJ・J・エイブラムス
TVシリーズで名を上げ、『M:i:III』で劇場映画初監督をした男です。
で、今回も同作と同じ印象を持ったのですね。
前作のときの記事を読み直すと、驚くほど彼が映画監督として進歩していないことに気付かされました。
一部引用しますと、

矢継ぎ早の見せ場てんこ盛りは良いとして、後半の荒唐無稽な展開と全体の遊びの無さ(=ゆとりの無さ)、そして大画面をまるで生かしていない窮屈な印象は、まだ「映画」監督ではないことを証明しています。


今回も全く同様。
派手な映像はあっても、映画的な広がりに欠けます。
いや、1ショットずつの絵は良いところもあるのです。
しかし映画はショットを繋いで作るもの。
全体にせせこましい編集でもってスケール感やわくわく感に欠け、そのせいでラストもカタルシスに欠けます。
例えば、エンタープライズ号処女航海の場面など、実にあっさりとしています。
ロバート・ワイズによる1979年版の映画はそんなに面白い作品ではなかったものの、同じような場面では広がりやわくわく感があったではないですか。
今回はそういったものが無いのです。
これって映画じゃない。
TVです。
私は映画館には映画を観に行くのであって、TVの大画面版を観に行くのではありません。
言っちゃぁなんですがこの映画、劇場の大画面向きの作りでは全くなく、ホームシアターかTV向きのものです。


それと気になったのは、知性の欠如。
スター・トレックの精神って、悪いヤツとドンパチして片付けるものじゃないですよね。
もっと道徳的、哲学的なものを分かりやすく描くものだった筈。
それが、色々な事情はあるものの、悪い宇宙人が暴れまわっているので、エンタープライズ号がやっつけるという単純化で良いのでしょうか。


で、また引き合いに出す『M:i:III』ですが、あれも『スパイ大作戦』の単純化の悪しき例でした。
元のTV版『スパイ大作戦』って、暴力とかには殆ど頼らず、様々なトリックを用いて敵を欺いたじゃないですか。
しかし『M:i:III』は、拷問という至極単純且つ暴力的な手段を用いたりで、知性の欠如が目立ちました。
今回も同様。
どうもJ・J・エイブラムスは、オリジナル版の知性を削ぎ落として知能指数が低い映画を作る傾向にあるようです。


世評は高いので期待して観に行ったのですが、どうも期待値よりも程度が低くて少々残念でした。
同じような内容だったら、先日クリアした『Mass Efect』をやった方がマシです。


じゃぁBlu-ray Discは当然買わないだろう、とは言い切れないのは、私がこういった宇宙SFが好きだから。
全く困ったものですが、まぁ本当に買うかどうかは、リリース時期に考えましょう。
と言うのも、サウンドがとても良かったのです。
音自体も迫力があったのですが、それ以上にサウンド・デザインが非常に優れていました。
宇宙空間での無音状態などで緩急を使い、迫力や緊張を出しています。
デザイナーは誰だろうと思ってエンドクレジットを見ていたら、ベン・バートが担当していました。
スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』シリーズで御馴染みの人ですね。
最近では『WALL・E/ウォーリー』で素晴らしい仕事をしていました。


最近観たハリウッド映画の中で、音楽はかなり良い方でした。
作曲家はマイケル・ジアッキーノ。
場面場面にメリハリを付けた曲を付け、スコアリングもしっかりしていた。
近年のハリウッド映画は、スコアリングを余り気にしない打ち込み系の映画音楽が目立つので、こういった正統派映画音楽は喜ばしいことです。
残念ながら、先日ご紹介したジェリー・ゴールドスミスの映画版テーマ曲は使われませんでしたが、ラストにアレクサンダー・カレッジ作曲のTV版テーマ曲が流れます。
これはかなり嬉しかったです。