days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

The Reader


ケイト・ウィンスレットがようやくアカデミー賞を受賞したことでも話題の、『愛を読むひと』に行って来ました。
火曜20時50分からのレイトショウ、シネコンは初の独占状態…かと思いきや、上映開始直前に20代前半と思しきカップルが私の後ろに座りました。
独占はお預けでちょっと残念でしたが、この2人も映画を楽しんでくれたかな。


さて結構前に話題となったベルンハルト・シュリンクの原作『朗読者』は未読なのですが、構成などはかなり映画向けに脚色しているのではないか、と思いました。
現代の弁護士レイフ・ファインズが少年時代を回想する構成になっているのですが、度々現代が入り込みます。
これは小説ではやらないのでは。
まぁ、スティーヴン・キングはちょくちょく細かく時制を割りますけれども、あれは映画的効果を狙ったものですからね。
ともかく、デヴィッド・ヘアの脚本と、スティーヴン・ダルドリーの演出は、説明過多にならず、役者の演技を見せて観客の解釈に委ねるようにしています。


映画は前半は15歳の少年デヴィッド・クロスが、20歳程年上の女性ケイト・ウィンスレットにのぼせ上がる「性春もの」。
しかしケイトがいきなり姿を消してから数年後、衝撃的な再会をしてからは、苦難に満ちた愛の残り火を描いた鬱屈した青春ものへと変貌します。
しかしこの青春ものも中々手強く、現代においては少年が成長したレイフ・ファインズの贖罪と運命の無慈悲を描き、ラストに希望を抱かせるようになります。


この流れは非常に良く出来ています。
原作は賛否両論のようですが、映画は感動の押し付けなど微塵も無く、厳しくも仄かな人間愛を感じさせる終幕で見事締めます。
このラストも原作とはかなり違うオリジナルのようですが、これは素晴らしい。


難点は、序盤のクロス少年初体験がいささか安手のポルノ映画のよう。
上映時間を考えると仕方ないかと思いつつ、少年にも観客にもインパクトを与えるならばあれくらいでも良いかもと思いました。
そして「年上の女性とのひと夏の性春」を露骨に描いているのは好感度が高い。
変に奇麗事のオブラートに包むことなく、少年が性に夢中になるのが分かりやすいのです。
「僕を愛してる?」と風呂場で尋ねられたときの、ケイトの表情が印象的です。
彼が少年に求めていたのは何だったのか。


この映画は、一貫して少年からの目線である女性を描いているので、心理が分かりにくいとこともあります。
全てがすんなりと理解出来るのではありません。
でも、これで良いのです。
彼女が最後に取った行動について、パンフレットを読むといきなり人によって解釈が違いますが、私は「朗読がもう無いから」だと思いました。


忘れていけないケイト・ウィンスレット
レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまでを観たときもうならされました
今回も素晴らしい演技。
いつも絶好調な役者は観ていて本当に楽しいですね。