days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Knowing


日曜朝一に『ノウイング』を観て来ました。
30人程の入りは、時間帯を考えると良いんだか悪いんだか。


物理学者ジョン(ニコラス・ケイジ)の息子カレブの通う学校で、50年前に埋められたタイム・カプセルを開けるセレモニーが行われます。
カレブが手にした紙には意味不明の数字がびっしりと書き連ねてあり、ジョンはそれらの数字が、地球上で起こった大規模災害の年と被害者数とを正確に表わしていることに気付くのですが。


VFXの進化でディザスター映画は派手になる一方。
ローランド・エメリッヒ『2012』に本作と、地球規模の災害を描く作品が立て続けに公開されるのも、VFXの進化によるものです。
が、恐らくはエメやんの新作が大味大作なのでしょうが、こちらはちょっと変わったアプローチを取っていました。
派手な見せ場を用意している大作にも関わらず、映画自体の印象が大作感が薄めなのは、主人公ジョンが体験する怪異ではなく、その心理を中心に描いているからです。


では怪異の描写がいい加減かと言うと、そんな事はありません。
誰もが驚くであろう、序盤の飛行機墜落事故にジョンが居合わせる場面が特に凄い。
予告編でも一部が流れていましたが、本編ではさらに大迫力。
あの後も延々ワンショットで撮っているように見せていて、実際の事故はあんなものじゃないとか思わせますが、迫力と力感で押し切ってしまっています。
また中盤に用意されている事故の場面も迫力満点。
段取りも上手く、観ていてついつい握りこぶしに力が入ってしまいました。
マルコ・ベルトラミの音楽は、バーナード・ハーマンか、はたまたジェリー・ゴールドスミスかという、正統派ハリウッド映画音楽で、弦を刻んで緊張と迫力を盛り上げます。
こういった音楽も最近では珍しいので嬉しかったです。


物語に関しては、これはもう、賛否両論ありましょう。
むしろ否定する人が多いのではないか。
しかし監督は『アイ,ロボット』の…というよりも、『ダークシティ』のアレックス・プロヤスです。
ですから途中からネタを分かってしまう人も多いのではないでしょうか。
特にラストはかなり宗教色が強く、そこでもまた拒否反応を起こす人もいそう。
少なくとも私は分かってしまったので、終盤の展開に腹を立てることもありませんでした。
例え私が望んでいない方向のオチだとしても。


それでもプロヤスの演出には好感を持ちました。
ホラーテイストを忍ばせつつ、緊張感を持続させ、テンポ良く保ち、最後まで飽きさせずに見せてくれます。
演出技術は中々のもの。
私自身は『アイ,ロボット』よりも面白く観られました。
まぁ、あちらは大味大作御用達の脚本家アキヴァ・ゴールズマンだったしね…


終幕も含めて突っ込み甲斐があるのは、止むを得ません。
大体にして災害事故の死者数は、正確な数値はその日の内に出るものではないでしょう。
事故から暫くしてから二次災害とかで死んだりするのは当たり前。
ですから当日の死者数のみ紙に書かれている、というのは無理があります。
映画を観ながら気になって仕方ありませんでした。


主人公を演じるニコラス・ケイジは、いつものニコラス・ケイジ
善人役の定番、うるんだ瞳で終始通しますが、何だかんだ言ってもついつい見てしまいますね。
近年の作品選びは個人的趣味に走り過ぎて才能の無駄遣いかとも思いますが、富も名声も得たのだから好きなジャンル映画ばかり出ているのも、それもまた結構な事です。
後半に登場するローズ・バーンは、全く彼女だとは分からなかった。
『トロイ』や『28週後...』のときに比べると随分と痩せたような。
彼女も含めてオーストラリア俳優で脇を固め、アメリ東海岸を舞台にしているのにオーストラリア・ロケなのも、コストの問題なのでしょうね。


作り手の意図は大真面目で道徳的なものですが、こちらはそれとは別に色々な意味で楽しめる。
余程この映画に感情的に入れ込まない限り、大傑作だと言う人も殆ど居ないでしょうが、私はこんな感じで楽しめました。