days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"Watchmen" on Blu-ray Disc


珍しく新譜についての記事を書いています(^^;
新譜と言っても、もう3週間前の発売ですが。


ウォッチメン』のBlu-ray Discを購入してあったので、ホームシアターにて鑑賞しました。


4月に劇場では鑑賞済みレヴューも執筆済みアラン・ムーア&デイヴ・ギボンズ原作グラフィックノベル(コミック)も読了しています。



今回購入したのは2枚組ではなく3枚組の方。
内2枚はBDで、それぞれ劇場公開版本編と特典ディスク。
もう1枚はDVD-VIDEOで、原作内に登場するコミックのアニメ化と、元ヒーローへのインタヴューという設定のモキュメンタリ等が収録されています。

ウォッチメンBDコレクターズ・バージョン(Blu-ray2枚+DVD1枚)

ウォッチメンBDコレクターズ・バージョン(Blu-ray2枚+DVD1枚)


3枚組は当然ながら高価な製品ですので、我ながら入れ込んでいるなぁと思いますが、レヴューでも書いたように、正直に言って映画の出来は左程上出来とは思えません。
製作者たちが原作の忠実な映像化を目指した余り、こなれていない箇所が目立つからです。
しかし再見すると、アラを知っているからか左程気にならずに楽しめました。
まぁ、楽しい映画かというと、暗くシリアスで、しかもキツいテーマを持つものなので、疑問ではありますが。


初見に指摘した構成上の問題などは置いておいて、今回気になったのは終幕の大事な部分。
ヒーローたちがとあるヒーローに説得されてしまうくだりがあります。
あれって、あの程度の詭弁を易々と受け入れてしまって良いのでしょうか。
特に気になるのがDr.マンハッタン。
感情よりも理性が勝っている彼が、そんなんで良いんかいな、と突っ込んでしまいました。


それとやはり目立つのは暴力描写の数々。
格闘場面で腕をへし折って骨が飛び出るのは、『ザ・フライ』を思い出させましたが、1970年代に作られていた格闘映画の影響なのかな。
子供の足を犬が食っているとか、殺人鬼の頭部をナタで真っ二つとか、腕を電ノコで切断とか、かなり残酷です。
原作以上に残酷にしているのは、監督の趣味なんでしょうか。


ロールシャッハが我を通そうとする場面は、知っていても緊張しますね。
極端な善悪二元論者で狂人でもある彼が、やはり感情移入しやすいというのは、人間の持つ暴力的感情によるものなのかも知れません。
だからこそ、彼は人気があるのでしょう。
ロールシャッハを演ずるジャッキー・アール・ヘイリーも好演ですね。


女優陣は新旧シルク・スペクターを演ずるマリン・アッカーマンカーラ・グギーノの2人だけですが、特にグギーノが良かったです。
マリンは前髪下ろしている方が綺麗ですね。


BDとしての画質ですが、これが劇場の忠実な再現だと思いました。
発色を抑え、フィルムグレインが目立つものですが、解像度など立派なもの。
黒潰れも気になりませんでした。
この評価も、劇場での画を覚えているからではあります。
いきなりBDで観た人の感想も伺ってみたいものですね。


音響は素晴らしい。
高解像度で高域も低域も伸びています。
終盤の大カタストロフィ場面など、部屋が振動しました。
でもうるさくない。
うーん、プレイヤーやアンプがもっと高品質な場合の音も聴いてみたいものです。


さてBD盤特典ディスクですが、収録時間が2時間弱もあるのに期待外れ。
原作の成り立ちに関しては面白いのですが、例によってアラン・ムーアがクレジットも含む一切の関与拒否を貫いているので、当然ながら登場せず。
しかしデイヴ・ギボンズは結構登場してコメントしてくれるので、興味深かった。
問題は映画としてのメイキング映像が少ないこと。
現実の自警団の問題等興味深いものの、もっと映画のメイキングが観たかった。
私の中では『ロード・オブ・ザ・リング3部作 SEE』のメイキングがリファレンスになっているので、それらと比べるとどうしても相当に薄味に感じられます。
特典映像が足りないならば、せめて本編ディスクにザック・スナイダーの音声解説が欲しかったです。
例えば、何故原作以上にセックス&ヴァイオレンスなのかとか、原作では一般人が仮面を被っているヒーローなのに、映画版では超人に見えるのは意図的なのか、とか。


もう1枚目の特典ディスクは、前述したように劇場コミック『黒の船』アニメ化。
結末は忘れていたので、お、こんなんだったっけ、と思いました。
30分程度の作品ですが、こちらも容赦無い残酷描写てんこ盛り。
腹に溜まったガスで膨張した部下の船員たちの死体をイカダに括りつけて浮力にするとか、原作通りとは言え相当にエグいです。
そういった狂気がテーマなのではありますが、グロ苦手な方は映画本編ともども敬遠されることをお薦めします。

で、これの主人公の声をジェラルド・バトラーが演じているのですよね。
ノローグも含めてほぼ全編喋りっぱなしです。
先日観た映画でも思いましたが、彼は良い声をしているので適役だと思いました。


こちらのディスクには元ヒーロー、ナイトオウル1世へのインタヴュー・モキュメンタリが入っていて、当然ながら演じるスティーヴン・マクハティ出ずっぱり。
この役者で最初に記憶に残ったのは、傑作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』序盤に登場する叔父役ですが、その次には『シューテム・アップ』にも登場していました。
今回は善人役。
ガイコツに皮が張り付いた系の顔付きがランス・ヘンリクセン風で、印象に残る役者です。


さらにこのディスクには、原作の劇中劇の成り立ち等がメイキングとして紹介されています。
総じて原作のメイキングとしての価値が高いように思えました。


…と、色々楽しんだ後にちょっとショックなニュースが。
あれれ、『Watchmen: The Utimate Cut』なるBD or DVDが北米でリリースですか。

しかも劇場版163分に対し、215分。
日本では未リリースのディレクターズ・カットは186分ですから、それに比べても相当に長いですね。
恐らく原作に忠実に撮影していたので、素材が残っていたのでしょう。
それに劇場公開だけでは回収出来なかった高額な製作費の為に、こうやって何度もリリースして売るのでしょうね。
ディレクターズ・カットが原作通りであっても、面白い映画になっているかどうかは少々疑問ではありますが、国内盤が出たら買ってしまいそうです。
でもその場合は、本編ディスクと原作コミック映像化である『Watchmen: The Complete Motion Comic』ディスクだけあれば十分です(^_^;