days of cinema, music and food

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"Syriana" on Blu-ray Disc


3年半前に劇場で観て以来の鑑賞になる『シリアナ』。
当時書いたレヴューを読み直してみると、我ながら結構厳しい事を書いたなぁ、と思いました。
劇場でどこか物足りなく思った映画を再見すると意外に良い印象を持つのは、先日BDで観たキングダム/見えざる敵』と同じですね。
今回の鑑賞は、その『キングダム』の影響。
中東とアメリカの関係を硬派に描いたスリラーを観たい、との感想を持ったからです。
どちらもクリス・クーパー繋がりなのも面白い。
まぁそれにしても、昨年夏に購入したディスクをようやく鑑賞ですか。
相変わらず消化が遅いです。


さて再見すると、劇場では非常に分かり難かったストーリーもすんなりと頭に入りました。
これは劇場鑑賞後にパンフレットを読んで、あちこち合点がいった当時の記憶が大きい。
主人公の1人が「パキスタン」からの出稼ぎ労働者だなど、映画本編だけ観ても分かりにくいのです。
そして映画の尺数では主要登場人物の中でも少な目に取られている彼、その出稼ぎ労働者の若者のエピソードが、今回は1番印象に残りました。
しかしながら心にまで響かない、観ていて心が痛くならないのは、脚本&監督スティーヴン・ギャガンの技量不足なのでしょう。
貧困や差別に付け込んで心に忍び寄る、テロ集団の卑劣な手口が描かれているというのに。
但し、映画全体が感傷を廃したドライなタッチでもあるのと、事件の全容を俯瞰的に描いているので、それも意図的とも言えるかも知れません。
利益の為ならば、人命や高尚な意識も排除するアメリカの身勝手さがテーマでもあるという、救いの無いスリラーですから、ラストで感傷的になるのは、これも辛うじて人間性を信じたいという作者の願いでもあるのでしょう。
ですからラストも今回はそれほど違和感無く観られました。



全体に複雑且つスリリング。
非常に見応えのある佳作だと思います。


さてBDとしての品質ですが、画も音もそれほどではありません。
これまた元々手持ち撮影の粗い画の映画ではありましたが、全体にクリアさには欠けます。
まぁでも映画の鑑賞を妨げませんし、個人的には及第点かなと思いました。
音も派手さはまるでなく、音域も狭く感じました。
サラウンドも殆ど残響音のみで、フロント中心。
最初はアンプの設定でも狂ったかと思ったくらいに、サラウンドが鳴りません。
画に集中して欲しいというサウンドデザインなのでしょう。


音楽はアレクサンドル・デプラ
リズムを中心とした緊張感重視の音楽でありながら、どことなく寂寥感を漂わせていて良かったです。

シリアナ [Blu-ray]

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