days of cinema, music and food

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Peter Gabriel "Up" CD vs. SACD


先日の『グローイング・アップ・ライヴ』に続いてピーター・ガブリエルピーター・ゲイブリエル)祭り。
2002年のアルバム、『Up』のSACDを入手しました。
写真の左が国内盤CD、右が輸入盤CD/SACD
ジャケットは離れて見ると実はピーガブの顔のドアップとなっていますね。
CDとの試聴比較をしているサイト等は余り無いようですので書いてみます。
尚、Amazonではバカ高い価格設定で売っている転売屋ばかりですが、HMVで普通に購入出来ます。
送料込みで2,500円ほど。
間違っても3,000円以上は出さないようにしましょう。


SACDは輸入盤のみ。
国内盤未発売です。
CDとSACDとのハイブリッドで、CD部分は通常のCDプレイヤーでも再生出来ます。
彼は自作アルバムのSACD化に熱心で、全作SACD化されています。
が、本作以外は2chでCDとのハイブリッドではないので、SACDプレイヤーが無いと再生出来ないものばかり。
さらにこのSACDで一番価値があるのは、ピーガブのソロアルバムで唯一のマルチチャンネルアルバムであること。
DVD作品では5.1chにリミックスしたものがありますが、CD/SACDでは本作のみとなっています。


このアルバムは非常に音質の評価が難しいアルバムです。
全体的に音を重ねて重ねてを繰り返し、抜けた高域が入っていません。
内省的な内容に合ってはいますが、わざとノイジーな音を入れたりもしていますし、いわゆる高音質アルバムに選ばれることは無いでしょう。
これの前作『Us』(1992年)と同系列の音作りと言えます。
しかも同じ曲の中でも、例えばドラムス・パートにマヌ・カッチェとゲド・リンチの2人がクレジットされているように、恐らく演奏者の得意とする部分のみを抜き出したりしているのでしょう。
ハイハットは誰々、スネアは誰々、などと言うように。
人工的で作り込まれたサウンドは、完全主義者らしいものとなっています。


ケースを開けるとこのようになっています。

写真上が国内盤CD、下が輸入盤CD/SACD
ハイ、意地悪なディスクとしてもおなじみですね。
英国人の成せる技なのでしょうか。
どっちが表裏か非常に分かりにくいディスクになっています。
国内盤はボーナス・ディスクが付いていますが、そっちも表裏の見分けが付きにくいもの。
最初は、どっちがアルバムで、どっちがボーナス・ディスクか一瞬躊躇したものです(笑)。
紫色のリングが輸入盤の方が大きいです。
これはひょっとすると、CD版とCD/SACD版を見分ける為のものかも知れません。


まずはCD部分の試聴。
プレイヤーはDVD-VIDEO/CDプレイヤーのPioneer DV-S737。
当然ながら2ch再生です。
久々に聴き直すと、2ch再生でも擬似サラウンドっぽい音作りだったことを思い出しました。
例えば2曲目の『グローイング・アップ』。

この曲など特に擬似サラウンドとなります。
今回も、サラウンドスピーカから音が出ていないのを確かめてしまいました。
コーラスやストリングス、スクラッチ・ノイズなどが、2ch再生でもかなりサラウンドします。
分からない人が聴いたら、まずサラウンドだと思うでしょう。
肝心の音質は、左程違いを感じませんでした。


次にCDとSACDとの比較。
プレイヤーは初代PKAYSTATION 3です。
曲は同じく『グローイング・アップ』。
CDは聴き慣れた音なのでバランスも良く聞こえます。
次にSACD
マルチチャンネル再生での試聴です。
まずびっくりしたのは、録音レヴェルの低さ。
ピーガブのヴォーカルがかなり小さい。
私が持っているSACD版はCD版よりもハイ・カッティングのものばかりだったので、ここまで違うとは。
アンプのヴォリュームを上げ、CDと同じようにヴォーカルが聴こえるようにします。
しかしベースとドラムスが重いビートを刻みだすと、CDには入っていなかった超重低音にまたびっくり。
これだけで全然印象が変わります。
しかもマルチチャンネルにするなら、それ向けに音響設計すべしというポリシーの持ち主であるピーガブらしく、かなり派手にサラウンド側に音が振られています。
コーラス、パーカッション、スクラッチ・ノイズ等が、後ろの片方のみ聞こえたり、後ろから前に移動したり。
音の分離も良くなって、各音がはっきり聞こえます。
そしてこれは、かなり音量を上げないといけません。
音量がそこそこだと、ヴォーカルの低レヴェルも含めて、各チャンネルに隙間が入り、かなり寂しく聴こえます。
しかし音量を上げると部屋が隙間無くマルチチャンネルの音に埋め尽くされます。


試しにCD版もサラウンド再生してみました。
包囲感は最高ですが、当然ながらSACDよりも楽器の音がはっきりと分離はしません。
まるで印象が違います。
SACDの方が余計に人工的なサウンドに聴こえます。


SACDを通して聴くと、何でも派手な移動や包囲をしているのではなく、楽曲ごとに丁寧なサラウンド設計がされていることが分かります。
『スカイ・ブルー』後半のブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマのコーラス。
サラウンド側から彼らのゴスペル・コーラスが立ち上がると感動します。
『ノー・ウェイ・アウト』と『アイ・グリーヴ』という、愛する人との死による別れを描いた傑作では、ストリングスがリスナーを優しく包み込みます。


大好きで何度も聴いた傑作アルバムではありますが、SACDのマルチチャンネル再生で新たな魅力に触れられました。
環境が許せば、ファンならば買い直す価値は十分にあります。


参考までに。

Up

Up

ここで買ってはいけませんよ。
「注意: SACDの互換機が必要です」とAmazonには書いてありますが、前述したようにCD部分だけだったらCDプレイヤーだけでも大丈夫です。