days of cinema, music and food

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BDP-LX91のHDMI接続&アナログ音声出力聴き比べ@アークス


吉祥寺店は何度か伺いましたが、府中に移転してからは初めての訪問です。
ご自宅を改築する際に地下にお店用シアターを作られ、しかもblogの記事では随分と思い切った実験をされた御様子。
お店訪問は楽しみです。
単なる訪問ではなく、今回の主目的はLX91にありました。


イオニアBlu-ray DiscプレイヤーのBDP-LX91は音質が非常に良く、イヴェント等で聴く度に感銘を受ける機種です。
また、HDMI全盛の昨今において、アナログ音声出力端子が付いている稀有な機種でもあります。
同端子が付いている機種は、現在においてLX-91とDENONのDBP-4010UDしかありません*1
AVアンプでのDSP処理が主流の中にあって、プレイヤー側でデコードして出力するというのは、流行とは真っ向反対です。
雑誌を見ても、AVアンプ側での豊富なプリセットを装備し、しかも細かくカスタマイズ出来るのが、当然のように書かれています。
そもそも、この機種のカタログやサイトを見ても、アナログ音声出力については余り大きくは書かれていません。


しかしながら、AVアンプにプリセットされた「ホール」だの「シアター」だの「スペクタクル」だの、音場を選択して自分なりにカスタマイズするというのは、面倒臭がりの私には到底使いこなせません。
確かに10年以上前は、購入当初の極一時期…いや、白状しましょう、3時間くらいはいじったりしていましたが、映画によって「合う」か「合わないか」と選択するのは面倒だし、大体元の音とかけ離れてしまうのが嫌でした。
雑誌やネットでは映画によって色々と設定をいじる人が多いようですが、ずぼらな私には無理。
AVハードマニアではなく、飽くまでも気軽に映画や音楽といったソフトを楽しみたいだけなのですから。
そんな訳で、AVアンプの設定も標準の音質を選択し、必要最低限の設定だけして後は殆どいじらないでソフトを鑑賞していました。
これは今も同様です。


BDP-LX91のプレイヤー・デコードには少々興味をそそられていたのは、そういった事情もあるのです。
プレイヤー側でソフトに収録されている音を忠実に出して再生するというのは、そもそもオーディオの王道でもあります。
しかし前述したように、今の時流からは全く反対。
どうせ使わない人が殆どだろうに勿体無い仕様だ…と思っていたら、アークスの白須さんのblogでLX91のアナログ音声出力を実験していた記事を読みました。

興味がありましたので、早速白須さんに電話してアークスで比較試聴させて頂くことになりました。


妻子と共に車でアークスに向かいます。
お目当てのお店は住宅街の1角にありました。
地上階から上は一軒家。
地階がお店になっています。
インターフォンを鳴らすと、白須夫人と思しき女性の「はーい」という声が聞こえました。
名乗ると、地下の扉が開いて白須さん登場。
階段を下りて、サンダルに履き替えます。


お店のサイトや白須さんのblogでお馴染みになった気分ではありますが、いやはやかなり立派な部屋。
インテリア・デザインも優れているし、白木が壁面・天井面でスノコ状になっていて、音響的にだけではなく、見栄えも非常に宜しい。
地下で窓がありませんが、居心地が良さそう。
しかし娘は「コワイー」を連発し、涙ぐみます。
自宅シアターでは全く問題無いのですが、さすがに変わった雰囲気ですから場所見知り再発です。
ともあれBD『オペラ座の怪人』の『Think of Me』を掛けてもらったのですが、娘は耳元で「コワイー」を連発して泣きます。
劇中で拍手喝さいになると、その間だけはつられた彼女も拍手拍手。
しかしそこ以外はやはり泣くので、仕方なく妻に近所の公園で遊んでもらうことになりました。
さすがに無謀だったか(^^;
サンダルを借りて娘を抱っこして階段を上がった妻は、白須家の一員と勘違いされたらしく、白須家で飼っている犬を柵越しに見ていた一家に「こんにちは」と挨拶されたそうです。


気を取り直して、白須さんがNHK BS-Hiエアチェックしたサラ・ブライトマンのコンサートを再生してもらいます。
HDMIの音声は、ふーん、テレビ放送でも結構色々と音が入っているのね。
かなりの音量で、高域がややビリビリした感じ。
でもコンサート会場となったオーストリアの聖堂は、映像だけではなく、広さも感じられるよう。
次にアナログ接続。
む?
いきなり音が聞き取りやすい。
司会のクリス・ペプラーと名前失念の女性の声が違う。
特にはっきり分かったのは、女性の声。
こちらの方が耳に心地良いです。
サラ・ブライトマンとイタリア人男性オペラ歌手とのデュエットでは、音量はかなりあるのに、うるさくありません。
会場も広く聞こえます。


HDMIで聞き直してみましたが、やはりHDMIの方が硬い感じ。
情報量も微妙に少なく聴こえます。


次に定番ソフトの『ダークナイト』。
冒頭の銀行強盗場面を再生です。
まずはHDMI
高音質で、そうです、この音ですよ、LX91は。
緻密で高解像度、迫力ある低音と耳をつんざくような高域は、さすがです。
しかし高域がビリ付くのも、よくイヴェント等で聴く種類の音でもあります。
音声をアナログ出力に切り替えて、また冒頭から再生します。
因みに音の切り替えをするには、ソフトを停止してメニューを呼び出さなくてはなりません。
使い勝手は余り良くない感じです。
ここは改善の余地ありですね。


「実はアナログ出力には問題があるのです」と白須さんは言ってソフト再生の再開。
冒頭の各映画会社のロゴマークが次々出る中、ハンス・ジマージェームズ・ニュートン・ハワードの重低音音楽が流れますが、ここで既に違います。
え!?
低音の厚みが違うよ、これ。
強盗団がロープをビルの間に張るべく、窓ガラスを割る音も生々しい。
低域だけではなく高域も伸びています。
しかも高域がHDMIのように全くビリ付きません。
うるさくないのです。
高低が伸びているのに重心は低く、音に厚みがあります。
特に低域はスピード感が素晴らしい。
ガキッ、という感じ。
無論、ここのシステムが素晴らしいのでしょうが、HDMIとはスピードが全然違います。
はっきり言って雲泥の差。
ここまで違うとは。
ちょっとびっくりです。


しかし白須さんの言う、アナログ接続の問題は分かりませんでした。
比較視聴後に正直に言うと、白須さんは言いました。
「アナログの方が立ち上がりが早すぎるのです。場面によっては絵よりも音の方が早いのです。」
全く気付かなかったので、再度アナログで視聴。
あっ。
約3分10秒時点。
金庫破りがドリルを金庫に付ける時のゴツンという低音が、明らかに吸着するより早く音が出ています。
約3分32秒時点。
ウィリアム・フィクトナーがショットガンをぶっ放すショット。
銃口から火花が出るより前に、ズシンと銃声がします。
これは気付かなかった。
しかしショットによっては音にずれが無いのも不思議です。
先日のアークスでのプロジェクター比較視聴会では、絵と音がずれているとはっきり指摘したお客さんもいたとか。
鋭い方もいるものです。


アークスでは、LX91からプロジェクターのPanasonic TH-DW7000にHDMI接続しています。
どうやらこれが遅れの原因となっているとか。
DW7000には何やらボードも噛ませていて、それで余計に映像が遅れているのだろう、との白須さんの予想です。
これが音声もHDMI接続だと音のずれは無いとか。
面白いものです。
なので逆に映像と音声が共にアナログであれば問題無いであろう、とのことでした。
またLX91のクロック数を上げると、ここまで差は無いらしい、ということでした(えびパンさんがおっしゃったとか)。


LX91のアナログ出力は非常に優秀なことが実感出来ました。
AVアンプでのデコード全盛の時代にあって、プレイヤー開発者のこだわりが伝わりますね。
開発者としてはこちらを使ってもらいたい、ということのようです。
業績が芳しくないパイオニアとしても英断だったと思います。
だってアナログ部分を搭載しなければ、定価40万円などという高い価格ではなく、もっと安く出来た筈なのだから。
こういったこだわりがパイオニアらしいとも言えます。
まぁ、だから業績も良くないのでしょうが。


冬になってから効かなくなったサンダーロンは、白須さんblogによると湿度が低過ぎると効果が低減するとのことでした。
加湿器を導入されたとのことでしたが、どこに設置したのか尋ねると、換気扇の向こうに置かれたとのことでした。
同時にエアコンも使わなくなったとのこと。
というのも、エアコンの温風がAVラックに当たるので、静電気が大量発生するからだとか。


先日ご紹介したピーター・ガブリエルの『Up』SACDを持参し、聴かせてもらいました。
曲は3曲目の『スカイ・ブルー』。
結果は…あれ、音が思っていたよりも良くないっ。
何だかさっきまで聴いていた、付帯音だらけのHDMIのよう。
「では、CDで再生してみましょう」と白須さん。
こちらの方が音質が良い。
ギターの音も綺麗です。
「うーん、自宅のPLAYSTATION 3での再生では、SACDの方が良く聴こえたのですが…ダマされていたのでしょうか。」と、私。
「プレイヤーによってCDの方が良い、SACDの方が良い、というのはあるのですよ。SACDの方が音が良いというのは、実は余りありません。CD用に作られたものは、CDの方が余計な加工をしていなくて良い場合が多いです」とのことでした。


これは自宅で再度比較視聴してみましたが、やはり我が家ではSACDの方が良く聴こえます。
普段聴くよりも音量を上げてみたものの、同じような感想を持ちました。
PS3SACDの性能がCDよりも良いのかも知れません。


ところで、本記事トップ写真にあるように、アークスではフロント・スピーカは2つのシステムを使っています。
今日はどのスピーカを使ったのか質問したところ、音楽のときだけ赤い方(エレクトロボイスのユニットものの)で、後は全部スクリーン周りのものだとか。
私は少々驚きました。
というのも、今日は全て赤い方を使っての視聴だと思っていたからです。
センタースピーカがスクリーンの上下にある場合、音源が分かってしまって集中出来ません。
画面の上下から音が聴こえると、どうも気になってしまいます。
よって我が家のシステムはセンター無しなのです。
しかしここで聴いたセンタースピーカは、その存在を全く感じさせませんでした。
「これもサンダーロン効果です。音離れが良くなったんですよ」と白須さん。
うーん、将来システム大改造をする場合があったら、これならばセンター導入をしても良いかな、と初めて思いました。
まぁやることがあっても、相当先の話ではありますが。


最後に「これは音が良いですよ」と、静かなクラシックSACD(アルバム名等訊くのを忘れました)を聴かせてもらい、かなりリラックス。
妻子も迎えに来たので、おいとましました。
白須さん、どうやら本当はお店の休日だったらしいのに、貴重な経験をありがとうございました。



因みに…妻子は近所の公園で遊んでいたそうですが、住民が皆地元に根付いている感じで、とても雰囲気が良かったそうです。
子供同士で遊んだりおばあさんが声を掛けてくれたりで、暮らしやすそうだったとのことでした。

*1:2月1日追記:マランツのユニバーサルプレーヤーUD9004も、アナログ7.1ch出力がありました